Oliver Heldensがテクノ名義HI-LOとして、新曲「KOALA」をリリースした。
この楽曲は、2014年に発表された自身のヒット曲「Koala」を再構築したものである。2013年の「Gecko」(後にBecky Hillのボーカルを加えた「Gecko (Overdrive)」として再ヒット)がHeldensのデビュー作として注目されたが、続く「Koala」もその成功に続く形でリリースされた。「Koala」は、当時広がりを見せていたフューチャーハウスの先駆け的サウンドで、ボーカルやサンプルに頼らず、メロディとグルーヴで勝負するタイプのインストトラックとして、DJやクラブシーンで高い評価を受けた。キャッチーなリードとグルーヴィーなベースラインは、Heldensならではのプロダクションスタイルを印象づけ、一発屋にとどまらない存在感を示した重要な一曲である。
今回、自身のレーベルHILOMATIKからリリースされた新バージョンは、現行テクノの要素を取り入れた、より硬質かつフロア向けのアレンジとなっている。原曲のポップさや軽やかさを削ぎ落とし、重心の低いキックと反復性の高いシンセを軸に、引き締まったダークな印象に仕上がっている。一方で、原曲にあった印象的なモチーフは一部残されており、自身のレガシーを現代的に再解釈したアプローチとして、長年のファンにも響く内容になっている。BPMはおよそ132前後。構成や音の重なりには、HI-LOがこれまで培ってきたテクノ的アレンジのノウハウが色濃く反映されている。さらに、タイトルにちなみ「コアラの鳴き声」を思わせる加工音が随所に使われており、サウンド面での遊び心も感じさせる。過去の代表曲を、現在のスタイルで再構築する事例は少なくないが、本作は変化と原点回帰のバランスがうまく取れた仕上がりだといえる。
本作はすでに、先日開催されたベルギーの「Tomorrowland」をはじめ、HI-LOやOliver Heldens名義のセットでもプレイされており、フェスのメインステージから小規模なクラブまで、幅広い現場に対応する1曲として機能している。
今回のリメイクについてOliver Heldensはこう語る:
「オリジナルの“Koala”は自分にとって大切な曲。今の自分のスタイルにあわせて、よりラフでHI-LOらしい形にしてみた。それが自然な流れだったし、実際にセットでもかなり反応がいい」
現在のHI-LOはReinier Zonneveldとの共作や、ZHU、KASABLANCAらとのコラボレーションなど、よりテクノ寄りの作品を多くリリースしており、本作もその流れを汲むものだ。自身のレーベルHILOMATIKでは、ジャンルの枠にとらわれないリリースを継続しており、『KOALA』もそのラインナップの一環にあたる。またHI-LOとしての活動の中でも、本作は比較的パーソナルな位置づけにある1曲かもしれない。
派手さよりも堅実さと技術でまとめ上げられた『KOALA』は、今のHI-LOを理解するうえでの入り口としても、Oliver Heldensというアーティストの進化を知る手がかりとしても、注目すべきリリースと言えるだろう。