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Daniel Allan 来日インタビュー:世界中が注目”バズる”新鋭のルーツとサウンド、SNS戦略の裏にある想い

192本目の動画がすべてを変えた・・届けたいのは「人」響かせたいのは「信念」。緊急来日を果たした新世代が語るバズの思考とは?

2025年6月5日(木)のCIRCUS TOKYO、そして6月8日(日)に開催されたアンダーグラウンド・イベントシリーズ『MIDNIGHT DINER』の日本版に、LAを拠点とし、フューチャーベースとインディーポップを融合させたサウンドと独自のインパクトあるSNS戦略で注目を集める次世代プロデューサー、Daniel Allanが来日を果たした。日本からはNUU$HI、DJコレクティブSPRAYBOX、さらに主宰でありDanielの盟友でもあるCOOPAHTROOPAが参加。平日の夜とは思えない盛り上がりを見せ、改めてDaniel Allanの日本における注目度の高さを印象づけた。


この貴重なタイミングで、EDMMAXX編集部を代表しTJOがインタビューを実施。自身のキャリアや音楽的ルーツ、さらにはSNS戦略の裏にある想いまで、たっぷりと語ってもらった。



TJO:今回、日本に来るのは初めてだと思いますが、日本にはどんな印象を持っていますか?そして今回の滞在中に何かやりたいことはありますか?

Daniel Allan:実は、以前に一度だけ日本に来たことがあるんです。でも、それは2023年の4月頃で、たしか5日か6日間の本当に短い滞在でした。本当に日本が大好きです。ファッションも音楽も全部好きで、なんていうか自分にとってすごく特別な場所なんです。ここにいられるのが本当に嬉しいです。今回は大阪でもっと時間を過ごしたいと思っています。前回、東京や京都ではかなり時間を取れたんですけど大阪には1日しかいられなかったので。もっと長く滞在して、ゆっくり大阪を探検したいと思っています。前回はライブを1本やっただけで、それ以外はあまり予定もなかったので、今回はもっとオープンな気持ちで、流れに身をまかせて楽しみたいなって思っています。もしおすすめの場所とかあれば、ぜひ教えてください!

TJO:Daniel Allanを初めて知る人に、どの曲をおすすめしたいですか?

Daniel Allan:それは難しい質問ですね。たぶん一番の定番は「I Just Need」だと思います。これは自分にとって、いろんな意味でキャリアのスタート地点になった大きな意味を持つ曲なので。



もし、もう1曲紹介できるなら、「Better With You」ですね。この曲はリリースしたばかりなんですが、自分が取り組んできたサウンドの“最新形”を一番表していると思います。でも、どこから聴き始めるか迷ったら、やっぱり「I Just Need」を選びますね。そこから自分の物語が始まったので。


TJO:あなたの音楽は、エレクトロニックな要素とエモーショナルな要素が融合していますが、音楽を作るときのインスピレーションはどこから得ていますか?

Daniel Allan:正直言って、自分の場合は「旅」がとても大きな助けになっています。ちょっと変かもしれないけど、僕は“カオス”がすごく好きなんですよ。ツアーのスピード感とか、頻繁に家を離れる生活が心地良いんです。自分にとってベストな曲って、飛行機とか車の中とか、そういう場所で生まれることが多いんです。ちょっと変だと思うけど、昔からずっとそんな感じで。実際、一つの場所にじっとしていなきゃいけないと少し苦しくなるんです。だから動き回ってる方が好きなんです。自分にとって、いろんな場所を見て回ることがすごくいい刺激になるので、もしかしたら、それが今自分がここ(日本)にいる理由なのかもしれないです。



TJO:最近注目しているジャンルやアーティストはいますか?新しいアーティストでも、前からリリースしているアーティストでも構いません。

Daniel Allan:新しいアーティストをどう定義するかにもよりますが、UK出身のDJ Heartstringっていうデュオがいて、彼らの音楽はちょっとトランス寄りで、最近はそういうのをよく聴いてます。でも実際のところ、自分はほんとジャンル問わず、どれにでも興味を持つタイプなんです。月間リスナーが800人くらいしかいないような、小さなアーティストを見つけるのが大好きで。そういう“隠れた才能”を掘り当てるのがすごく楽しいんです。自分はそれを完全にデジタル上でやるタイプですね。そんなふうに、いつも新しい音楽を深掘りするのにどっぷりハマってるんです。



TJO:新しいアーティストではなくて、今のあなたのサウンドに影響を与えたアーティストを3人挙げてもらえますか?

Daniel Allan:うわー、これは難しい!3人に絞るのって本当に大変ですね。でも、間違いなく自分の中でずっと一番なのは Skrillexです。彼はいつでも僕のナンバーワン。そして音楽にハマり始めたころにめちゃくちゃ影響を受けたのがFlumeで、最近はその頃のインスピレーションをまた自分の今のサウンドに取り入れているのがすごく面白いと感じています。3人目を挙げるなら、たぶんAbove & Beyond。いわゆるオールドスクールなトランス・グループですね。最近はそういうトランスの影響も自分の音楽にまた少しずつ取り戻そうとしてるんです。だから3人に絞るのは難しいけど、この3人が自分にとっては一番しっくりきますね。




TJO:トランスミュージックが好きなんですね?

Daniel Allan:そうなんです。ちょっと意外だけど、自分が最初に作った音楽ジャンルってトランスだったんです。Daniel Allanとして活動する前は、遊びでやってた別名義のプロジェクトがあって、ちょうどAbletonを使い始めて、音楽制作のやり方を学んでいた時期ですね。トランスは、自分にとっての“音楽の初恋”みたいな存在でした。で、今はそのトランスに対して、自分なりの新しいアプローチを見つけ始めてる気がします。もっと自分らしい感覚というか、今の自分を反映した“2025年版のトランス”という感じかもしれません。最初は、Armin Van Buurenの『A State of Trance』やTiestoの『In Search of Sunrise』 とか、そういうサウンドに早くからハマっていました。というのも15歳年上の兄がいて、子どもの頃にいろんな音楽を教えてくれたんです。だから、それが自分の音楽人生の原点になったんだと思います。




ーーー「Better With You」について





TJO:ここからは「Better With You」の話をしていきましょう。あの曲最高ですね!制作時にどんなコンセプトを考えていましたか?

Daniel Allan:去年の年末に『Noise Pollution』というミックステープを出したんです。自分が好きなサウンドを全部詰め込んだ、いわば“サンプラー”的な作品で、ジャングルっぽいトラックもあれば、ちょっと実験的でヘンな音もいろいろ入ってました(笑)。そのあと、正直何を作っていけばいいのか分からなくなって。それでロンドンへの旅を決めて、1か月くらい現地で曲作りをしていたんです。その間に、少しずつ「これが自分のサウンドかもしれない」って感じられる方向性が見えてきたんです。


その流れは、「Better With You」や、その前に出した「Something More」にもつながっていて、最近は「シンセそのものが“フック”になる曲」っていうのをテーマにしてるんですよね。もちろん、自分はボーカルも大好きで、ポップミュージック的な構成も意識してます。

影響を受けたアーティストで、さっき名前を出してなかったんですけど、Fred again..も自分にとって大きな存在です。彼も元々はポップ畑出身で、自分も似たような視点で「この曲のフックって何だろう?」って考えるんですけど、それが必ずしもボーカルでなくてもいいんじゃないかって思うようになって。「Better With You」や「Something More」では、シンセラインがフックになるようにってすごく意識して作ってました。感覚としては、初期のFlumeのようなシンセサウンドに、トランスやUKガラージっぽい4つ打ちのドラムを掛け合わせるような感じですね。なんというか、気づいたら“ちょっと変わった自分の好みのゾーン”にハマっていった感じで。でもそれがすごく自分らしく感じられて、すごく楽しいんです。自分の音ってこういうことかって初めて思えて、今それが形になっていくのを見られるのが本当に面白いですね。



TJO:そうですよね、この曲は本当にビッグチューンだって話してました。

Daniel Allan:ありがとう!あれは自分にとっても大きな曲で、そう言ってもらえて本当に嬉しいです。自分でもあの曲をとても気に入っています。

TJO:あのカラフルなシンセが本当に印象的でした。制作のときに意識していたことや、難しかったことは何ですか?

Daniel Allan:そうですね。2025年にアーティストとして活動するうえで、インターネットってやっぱり欠かせない存在なんです。だからこの曲では「ここは絶対ネットに投稿するだろうな」っていう瞬間を、はっきりわかる形で1つ作りたかったんです。正直言って、そういう視点で音楽を作ったのは初めてだったんですが、結果にはすごく満足しています。自分にとってはひとつの思考実験のような感じで、「そういう目的の曲を、自分だったらどう作るか」を試してみたんです。

さっきシンセについても話しましたけど、今回は特に「8秒」「12秒」「16秒」みたいな、短くて印象に残るクリップをどう作るかをすごく意識していました。そういう瞬間があることで、より多くの人に引っかかる可能性があると思って。

出来上がったものには本当に満足しています。僕はコード感にこだわるタイプで、ポップソングのフックみたいな要素も大好きなんです。だから今回の曲は、いわゆるポップソングとは違うんだけど、それでもポップの持つ魅力をしっかり取り込めた気がしています。



TJO:あなたにとって特に思い出深いコラボレーションは?

Daniel Allan:これは本当に難しいですね。というのも、自分がコラボしてきたアーティストの多くが友人でもあるんです。それって本当に理想的なことだと思っていて。どのコラボもそれぞれ印象に残っているので、ひとつに絞るのはなかなか難しいんです。

でも、特に記憶に残っているのは、PARISIとのセッションですね。これまでいろんなセッションを経験してきましたが、どれもユニークで新しい学びがあるんです。ただ、そのセッションが特別だったのは、彼らのスキルセットが圧倒的にユニークだったからです。

彼らはMarcoとJackの兄弟で、Marcoは若い頃からすご腕のジャズピアニストで、弟のJackは驚異的なドラマーでした。特に印象的だったのが、MarcoがROLI(ローリー)という革新的なシンセサイザーの公式デモンストレーターを長年務めていたことです。彼はその製品のツアーを担当していて、開発チームに直接フィードバックを返して、機能の方向性にも関わってたんです。つまり、世界で一番ROLIを弾きこなせる人ってたぶん彼なんですよ。



ピアノやドラムみたいな伝統的な楽器に秀でた人はたくさん見てきましたが、Marcoは“自分だけの楽器”を持っているんです。あのセッションでは本当に、「彼が楽曲に魔法をかけられるよう、ただ邪魔しないようにしよう。」って気持ちでいました。

だから、PARISIとのセッションは自分の中でも特別な思い出です。でも、LyraやRio Craigなど、他にも一緒に仕事ができている友人たちはたくさんいて、本当に恵まれていると感じます。ひとりを選ぶのは難しいですが、PARISIとの時間は、今でも心に残っています。本当に素晴らしいアーティストたちでした。


TJO:実際に彼らのプロダクションスキルは凄かったですか?

Daniel Allan:いやほんと、彼らはとんでもなく凄かったです。たとえばFred again..のアルバムシリーズ『Actual Life』の楽曲もかなり手がけていますし、Ed Sheeranのアルバムや楽曲も沢山プロデュースしてるんです。でも正直、プロダクションスキル以上に「人として最高」なんですよね。プロデューサーとしてもすごいし、面白いプラグインや制作テクニックもたくさん持ってるんですが、それ以上に僕への接し方が本当に素晴らしかったです。Coachellaでの彼らのステージにも招いてくれて、本当に感動しました。彼らは本当に…最高の人たちです。だから、プロデューサーとして優れているのはもちろんなんですが、それ以上に「人として最高」でした。




TJO:そういえば、Coachellaにも出てましたよね?配信で観ましたよ!

Daniel Allan:観てくれたんですか?いや〜あれは本当に最高でした。「Man Down」という楽曲を一緒に制作したんですが、この曲は、実は私たちが初めてセッションをした時にできたもので、実はその日に一気に5曲も作りました。さっきも言いましたけど、彼らは本当に天才だと思います。

Coachellaも本当に素晴らしかったです。実は僕はこれまで一度もCoachellaに行ったことがなかったんです。というのも「自分が出演するまでは行かない」と決めていたから。でも今回は少し例外でした(笑)。自分のセットではなかったのですが「これだけ近ければOKだろう」と思って、自分に許可を出しました。

1週目はPARISIと一緒に出演し、2週目はSnakehipsと一緒にパフォーマンスをしました。SnakehipsはDo LaBステージでの出演で、実は彼らと共作した楽曲を披露したんです。やはり、Coachellaは本当に象徴的なフェスティバルだと思います。なので、僕にとって初めてのCoachellaが「アーティストとしての参加」であったことは、本当に特別な経験になりました。そのおかげで、一層特別な思い出になりましたし、本当に楽しかったです。



TJO:あなたの音楽キャリアの中で、ターニングポイントとなった出来事や瞬間は何ですか?

Daniel Allan:同じことばかり言ってるようで申し訳ないけど、やっぱり「I Just Need」が自分にとってのターニングポイントですね。あの曲は、たった15分で完成したんですよ。Lyraがボーカルのフックを持ってきてくれて、自分は最初に「I just need」っていうフレーズをチョップして作ったんです。それが本当に最初にやったことで、しっかり聴き返すこともなく、一瞬で出来上がったんです。本当に驚きでした。というのも、自分がリリースした初めての4つ打ちトラックだったんです。それまで一度もハウスのビートを出したことがなかったので。正直なところ、最初は「この曲そんなに良くないかも」と思っていました。でも、友達みんなに「何言ってんの、絶対出すべきだよ!」って背中を押されて。それで出すことにしたんです。そこから、自分のツアー活動が始まりましたし、アメリカのリスナーにも徐々に知られるようになりました。

もちろん、今では自分のサウンドも少しずつ進化してきたと思っています。でも、今聴いても「I Just Need」には飽きがこないんです。多くのアーティストが、自分の一番ヒットした曲に「好きだけど嫌い」みたいな複雑な感情を抱いたりしますが、自分は今でもこの曲と、その背景にあるストーリーを誇りに思っています。おそらく、作るのにほとんど時間がかからなかったからだと思います。曲作りで、ミックスを何十回も繰り返していると、だんだんその曲が嫌になってきたりするじゃないですか。でも「I Just Need」は一気にできたので、嫌になる余地すらなかったんです。だから自分にとっては、この曲こそがすべての始まりであり、いつまでも忘れられないターニングポイントなんです。



ーーー SNSでのブランディングについて



TJO:あなたは音楽だけでなくSNSや動画でも注目を集めていますよね。SNS活用に力を入れているのはなぜですか?

Daniel Allan:アーティストがSNSにしっかり関わることは、本当に大事なことだと思っています。ここ数ヶ月、一緒に仕事をしているHudsonというスタッフがいて、彼が僕の動画制作を手伝ってくれています。また、もう一人Markというビデオグラファーもいて、彼とは8〜9ヶ月くらいツアーを一緒に回っています。Markとの最初の仕事のとき、僕は「とりあえずカメラ持ってついてきてくれれば何とかなるでしょ」って感じでお願いしたんですが、正直あまりうまくいかなかったんです。僕が具体的な指示を出せなかったし、彼に「何を撮ればいいの?」と聞かれても「うーん…とりあえずやってみて」みたいな曖昧な返事しかできませんでした。そこで自分の中で意識が変わって、「これはちゃんと勉強しなきゃダメだ」と思うようになりました。Instagramは、自分自身が“クリエイティブ・ディレクター”になったつもりで運用しないといけないなと。それからは編集の技術や、どうやったら見栄えよくなるかなど、すごく掘り下げて学びました。

正直、最初は本当に苦手でした。たぶん、どのアーティストも最初はそう感じるんじゃないでしょうか。アーティストって、たった4年前と比べてもまったく違う立場になってきていますよね。ものすごいスピードで変化しています。僕自身は、音楽オタクみたいなところがあって、ただただ音楽を作っていたいタイプなんです。でも、それだけじゃ今の時代はダメで、キャリアの目標を達成するには、音楽以外のこともやらなきゃいけないと気づきました。それに気づいたとき、「その事実にただ落ち込むか、それとも前向きに取り組むか」の二択だなと思って、本気でSNS運用に取り組み始めました。プロの映像作家のような編集スキルは持っていませんが、「どう見せたいか」というビジュアルのイメージやアイディアはたくさん持っています。時には自分で台本を書いたり、シーンごとのショットリストを作ったりすることもあります。

SNSに関して一番大事な気づきは、「動画がバズってほしい」と思うのは当然だけど、忘れてはいけないのは「相手は人間」だということです。自分が話しかけてるのは「アルゴリズム」じゃなくて「人間」なんですよ。

僕が今こうやって君と話しているように、画面の向こうには実際に誰かがいるんですよね。多くの人が「1000万回再生いかなきゃ」とかバズる事にとらわれがちです。僕もそういう時期がありました。でも、実際に人が見ているんだと意識するようになってから、「自分が視聴者だったらこの動画を楽しめるかな?」という視点で考えるようになったんです。

以前は「ちゃんとした長尺のストーリー仕立ての動画を作るか、iPhoneで自撮りして、さくっと投稿するか、そのどっちかしか選べない」と思っていました。でも今は「どっちもやっていい」と思えるようになりました。10秒ちょっとのカッコいい短い動画だって成立しますしね。そんな感じで、SNSにはかなり関わっていて、最近では本当に楽しめるようになってきたと思います。



TJO:TikTokなどのSNSで音楽をプロモーションするとき、どんな戦略を考えていますか?

Daniel Allan:うーん…正直に言うと、「とにかくやる」って感じですね。できるだけたくさん。時間はかかるし、時には音楽を作るよりも大変だったりするんですけど、それも含めて「作品へのリスペクト」だと思ってます。

曲を作るのに時間をかけてるなら、ちゃんと人に届けるところまでやらなきゃ、その曲に失礼だなって思うんです。別に、踊ったり裸になったりしろって話じゃないですよ(笑)。でも、自分のアートを大事にするってことは、ちゃんと伝える努力もするってことだと思うんです。

何回か話してるんですけど、「I Just Need」がバズったときの話があって。あれ、192本目の動画だったんです。191本出しても誰にも響かなかった。でも、192本目で100万回再生されて、結果的に全米のダンスチャートで1位になったんですよ。それも、全部自分一人で、iPhoneだけでやってました。チームもいなかったし、ただ「この曲は絶対いける」って信じてたんです。


だから、まあ時間はめちゃくちゃかかるし、しんどいこともあります。でも、アーティストとして生きていきたいなら、それはもう「仕事」じゃないですか?どんな仕事だって、嫌な部分ってあると思うんですよ。でも僕は本当にラッキーで。今こうして日本でライブができて、Abletonで家賃払ってるわけです(笑)。だから、動画を撮るのに1〜2時間かかったとしても、それで文句言える立場じゃないなって思うんです。
世の中には、本当に辛い仕事してて、生活に満足してない人もたくさんいますからね。だからこそ、自分のやるべきことをちゃんとやろうって、そう思ってます。


TJO:セルフブランディングについて、特に意識していることや気をつけていることは何ですか?

Daniel Allan:セルフプロモーションのことですか? そうですね…これはすごく繊細な話だと思うんです。人に何かを「してもらう」って、簡単そうに見えて、実はとてもデリケートな行為なんですよね。だから自分は、なるべく何かを「お願いしない」ようにして、代わりにできるだけ「与える」ことを意識しています。というのも、あれこれ頼んでばかりいると、だんだん気持ちがこもってないように見えるし、なんだか本物っぽくなくなると思うんです。だから、自分が出せるものはできるだけ出すようにしています。たとえば、制作のノウハウとか、自分が本気で“かっこいい”と思える動画とか、未発表のリミックスをSoundCloudに上げたり、音源を無料で配ったりとか。

もし今後何か“お願いごと”が控えているってわかっているなら、ツアーの告知とかの前に、10〜20個くらい「何かを与える投稿」をしておきます。それは見返りを求めずに、純粋に「楽しんでもらう」ためのものです。

自分が強く思っているのは、「お願いをする前に、まず与えるべき」ということ。逆に言えば、お願いばかりしていたら、結局誰からも何も得られないと思うんですよね。


TJO:最近、プライベートでハマっていることは何かありますか?

Daniel Allan:いや〜難しい質問ですね。正直言ってプライベートってあんまりないですよ(笑)。でも、ちょっとでも旅できる時間があると本当にありがたいなって思ってます。今回の旅も半分仕事で、半分はプライベートみたいな感じなんですけど、少しでも旅っぽいことができると、それだけで嬉しいですね。ただアーティストって、基本的にずっと仕事してるようなものなんですよ。だから、バランスを取るのがめちゃくちゃ難しいんです。むしろ、こっちがバランスの取り方を教えてほしいくらい(笑)。もっとプライベートな時間が持てたらいいのになって思います。今はもう音楽とか、その周りのことにどっぷりハマりすぎてて…。読書でもしなきゃなとか、音楽以外に何かクールなことも始めたいなって思ってはいるんですけど、結局ずっと音楽ばっかりやってます(笑)。


TJO:先ほど話してくれたCoachella出演も含めて、今後挑戦してみたい事や、これからの展望について教えてください。

Daniel Allan:そうですね、Coachellaに関しては…やっぱり「自分のセット」で出演できたときに、初めて“やりきった”って思える気がしてます。結局、ゴールって終わりがないんですよ。ひとつ達成したら、「EDC出たから、次はヘッドライナー狙いたいな」って次が出てくるんですよね。だからこそ、今を楽しむことってめちゃくちゃ大事だと思ってて。いつも次の目標ばっかり考えてると、どんどん“仕事っぽく”なっちゃって、純粋に楽しめなくなるじゃないですか。

「やってみたかったことリスト」はたくさんあるけど、その中で今年は特に嬉しいのが、Lollapaloozaに初めて出られること。あれって、自分が子どもの頃に初めて行ったフェスなんですよ。それだけに、カレンダーに特別印をつけてるくらい楽しみにしてます。あと今年はHard Summerにも出るし、他にもたくさんクールなライブがあって。ほんと、ラッキーだなって思います。


まだまだやりたいことはあって、たとえばオーストラリアではまだプレイしたことがないんですよ。だからそれも大きな目標のひとつです。それに、自分は子どもの頃ずっとテニスをやってて。ある意味、最初にハマった情熱はテニスだったんです。だから今は、「音楽でグランドスラムの各都市を回れたら最高だな」って思ってて。たとえば、1月にオーストラリア、5月にフレンチ・オープン中のパリ、7月はウィンブルドン期間のロンドン、9月はUSオープン期間のニューヨークって感じで。音楽が、自分の“最初の夢”だったテニスに繋がったら、本当に最高だと思ってます。


TJO:うん、きっとできますよ。願ってます!そして、今のタイミングで発表できる範囲で構いません、今後のリリースや発表予定の作品などがあれば教えてください。

Daniel Allan:そうですね、最近リリースした「Better With You」は、これから出す予定のEPの最初のシングルになります。EPのタイトルはまだ公表したくないんですが、全体的に“今の自分がハマっているサウンド”を詰め込んだサンプラー的な作品になっています。
コラボ曲もいくつかあって、Louis the Childとの楽曲や、Stressheadというすごく才能あるアーティストとの曲も収録される予定です。それから数週間以内に、次のシングル「Start to Slip」もリリース予定です。これはこの後のDJパートで流すので、ぜひ聴いてみてください。とにかく、これからもどんどん音楽をリリースしていきたいんです。それが、自分にとって何よりも大事なことなので。


TJO:僕たちも、それをずっと楽しみにしてますよ!

Daniel Allan:ありがとう。今は音楽をリリースする流れにうまく乗れてて、本当にワクワクしてます。

TJO:日本のファンに向けて、メッセージはありますか?

Daniel Allan:うわー、それ教えてもらわないと!「日本が大好き」って日本語でどう言えばいいですか?「Nihon」って日本のことですよね?(TJOが日本語を教える)

「日本、大好きです!」、うん、それが僕のメッセージです!



Daniel Allan Official Site
https://danielallanmusic.vault.fm