UK発のプロデューサー/DJ、Duskusがついに日本初上陸を果たした。舞台は渋谷・CIRCUS TOKYO。HEAVEN’S GATE × 73% × lifestreamが共同で主催したこの夜、会場は開演直後から異様な熱気に包まれていた。ゲストDJとして登場したDuskusは、彼らしいエモーショナルかつドラマティックなセットで観客を一気に引き込み、フロアを歓声とともに揺らし続けた。
共演したDJ陣もそのプレイに呼応するように熱量を重ね、イベントは朝まで続く長い夜へと突入。終盤には1Fフロアで、Duskusや出演陣に加えてSkin On Skin、Vantage、 Aiohbanそして、今回韓国から来日し、Duskusの前座を務めたMAR VISTAといった面々が集結し、B2Bでさらに火力を増したセッションが繰り広げられた。Duskus の初来日を軸に、国内外の才能が響き合った一夜は、参加者にとって忘れられない体験となった。
そんな熱狂の翌日、私たちはDuskus本人に会い、「日本のファンからどんなエネルギーを受け取ったのか」「音楽に込めた“癒やし”のテーマはどこから来るのか」――初来日の感想や音楽観について、EDM MAXX編集部を代表してTJOがインタビューを行った。

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・日本のファンとライブの印象
TJO:日本での初パフォーマンスはいかがでしたか?
Duskus:本当にクレイジーでした。正直、今まで出演した中でも一番クレイジーなショーのひとつでした。これまでどの国に行っても、最初からこれほど強いエネルギーを感じたことはありません。観客の皆さんは最高で、人々はとても謙虚で、本当に親切でした。
・原点/ダンスミュージックとの最初の出会い
TJO:ダンスミュージックを好きになった一番最初のきっかけはなんですか?
Duskus:電子音楽を作り始める前は、クラシックギターやアコースティックギターを弾いて育ちました。15歳くらいのときに「ほかのことをやってみたい」と思ったんです。ギターは大好きでしたが、YouTubeで誰かがFL Studioでビートを作っている動画を見て、「うわ、ノートPCでビートが作れるんだ」と衝撃を受けました。それですぐにFLをダウンロードしたのですが、そのあとYouTubeでSkrillexがAbletonを使っているのを見て、「やばい、Abletonに切り替えなきゃ」と思ったんです。そこからずっと続けていて、もう13年になります。
TJO:そして本格的にダンスミュージックに恋に落ちたのは、ロンドンでSkrillexのショーを観たときだったそうですね?
Duskus:そうです。たしか16歳くらいで、その年齢ではまだお酒も飲めませんでした。場所はコーンウォールかサマセットだったと思います。イングランドのどこかにある大きなドームで。でも、人生で最初に行ったギグのひとつで、そこでSkrillexを観ました。お酒も何もなく、ただ音楽だけを体感しました。あれは今までで最高のギグのひとつです。本当にクールでした。
・“Romantic Rave”というコンセプト
TJO:レイヴミュージックに「エモーショナル」「ロマンティック」といった感情的な要素を融合させようと思った理由やきっかけを教えてください。
Duskus:当時ロンドンで「Romantic Raves」という小さなイベントをやっていました。僕と仲間たちでエモーショナルなダンスミュージックのためのギグを企画していたんです。当時のロンドンにはそういう音楽があまりなくて、ヘビーなものは多かったのですが、メロディックで感情的なものは少なかった。だから自分たちでそういう場を作ったんです。それがすごく楽しかったです。
・Fred again..との出会いとコラボレーション
TJO:Fred again..とは最初どのように出会ったのですか?
Duskus:Disclosureのマネジメントチームのレーベル「Method」と契約したとき、キャンプに行く予定があって、レーベルのスタッフに「ビデオグラファーを連れて行くといいよ」と言われました。それで紹介されたのがTheoで、彼はFredのビデオグラファーでした。Theoが僕らと一緒にキャンプに来て、いろいろ撮影して、それを後でFredに見せたそうなんです。そのあとFredから「今作ってるEPのことを教えてよ」とメッセージが来ました。
それから連絡を取り合って、何曲か一緒に作業しました。僕には「Cut」というトラックがあって、それを一緒に仕上げようとしたのですが、結局うまくいきませんでした。その後、「glow」のスケッチを彼に送ったのですが、それがきっかけでした。そこから一緒に磨いていって、最終的にあんなにビッグな曲になったんです。
TJO:錚々たるメンツのアーティストと共に作られた「glow」の制作過程について教えてください。
Duskus:最初に「glow」を始めたときは、コードと全体の雰囲気しかありませんでした。ドラムをどうすればいいのか分からなくて、自分で何パターンも試したのですがうまくいきませんでした。それでWhatsAppでFredに送ったら、「すごいね、ちょっといじってみるよ」と言ってくれて。たぶんその後、FredがFour Tetに送って、彼がドラムのスケッチを作ったんです。Fredがそれを気に入って、さらに積み重ねていきました。
その後ロンドンでFredとスタジオに入る予定があったのですが、彼から「ねえ、俺の友達のSonnyも来ていい?」とメッセージが来て。「え、マジで?SonnyってSkrillexのこと!? 冗談だろ!」って叫びました(笑)。で、実際にスタジオに入ったらFredとSonnyがいて、本当にいい人たちでした。そこで一緒に曲を作って、完成までに数か月はかかったと思います。
曲が長いので、一度離れて聴く時間も必要でした。最初は4分の曲だったのですが、Sonnyがずっといじり続けてFredに送り返して、気づいたら8分になっていました。でもみんなで聴いたときに「8分のほうが絶対いい」と全員一致で決まったんです。それで完成しました。
TJO:本当にクールですね。あの曲はとてもドラマチックだと思います。
Duskus:そうです、ドラマチックですし――まるで旅のようなんです。あの曲のあとから、プログレッシブなスタイルにすごくハマりました。今までセットで8分の曲なんてかけたことがなかったのですが、「glow」を完成させたら、それがとても自然に感じられるようになったんです。
・自然、癒やし、そしてインスピレーション
TJO:自然から多くのインスピレーションをを受けていると語っていますが、それはどんな経験や瞬間から始まったのでしょうか?
Duskus:僕はボーイスカウトで育ったんです。父も入っていたので、家族と一緒にキャンプやアウトドアでたくさんの時間を過ごしました。16歳か17歳くらい、大学に通い始めた頃に数年間やめてしまったのですが、その後、友人のKierがウェールズに森を買ったんです。そこに一緒にキャンプに行くようになって、「うわあ、これめっちゃ最高だ。子どもの頃によくやっていたな」と懐かしく感じました。それ以来ずっと通っています。音楽制作をずっとやり続ける日常から抜け出せるんです。森の中でただ座って、友達とくつろぐのは、ある意味で瞑想みたいなものですね。
TJO:ヒーリング(癒し)をテーマにした音楽を作る中で、ご自身が癒やされたと感じる経験はありましたか?
Duskus:あると思います。たいていは友達と一緒に過ごしているときですね。焚き火をしたり、ハイキングに行ったり、川でアイスディップ(水に飛び込む)をしたりします。そういう時間のあとには、いつもリフレッシュして音楽を作る準備が整った気持ちになります。音楽のカオスから一歩離れて、音楽をやっていない友達とただくだらない話をする――それ自体が癒やしなんです。
・制作スタイルと音楽的進化
TJO:ライブやDJでの観客の反応が、自分の音楽づくりに影響したことはありますか?
Duskus:あると思います。でも基本的には、自分のために音楽を作るようにしています。自分が好きなことに忠実でありたいんです。もちろんショーでお客さんに楽しんでもらいたい気持ちはありますが、自分が大好きな音楽を作れば、たいてい他の人も好きになってくれると思います。DJをするときも同じで、自分が「これカッコいい」と思う曲をただかけたいんです。ちょっと変な曲でも、「他の人も気に入ってくれたらいいな」と思いながら。
TJO:音楽を通して、ファンに一番伝えたい想いは何ですか?
Duskus:最近は、音楽をひとつの「旅」として楽しむことにハマっています。すべての曲がすぐにクラブ仕様である必要はないし、大きなサウンドでなくてもいい。静かな瞬間があってもいいんです。他人がどう思うかを考えすぎず、今この瞬間を楽しむこと。それが大事だと思います。好きなように作っていいし、ルールなんてありません。僕にとって音楽は瞑想的な旅のようなものです。うまく説明できないんですけど、そういう感じです。
・DJとしての哲学・現場での視点
TJO:DJで大事にするのは1曲目?それとも最後の曲?
Duskus:セットによります。とてもチルな感じで始めることもあって、その場合は徐々にビルドしていけるのがいいんです。でも昨日のように、すでに観客がめちゃくちゃ盛り上がっているときは、「glow」で始めて一気に空気を作る必要がありました。本当に状況次第なので、一概には言えません。
TJO:DJの現場で焦ったトラブルエピソードを教えてください。
Duskus:すごく古いデッキが置いてあって、見たこともない機材を使わなきゃいけなかったり、何かがうまく動かなかったりすることはありました。でも大体は楽しいし、大したトラブルじゃないです。でも一番ワイルドだったのは去年のノルウェーです。誰かがデッキにぶつかってドリンクをこぼしてしまって、完全に片方の電源が落ちたんです。全然復活しなくて、なのでもう1台のデッキだけで全部プレイするしかありませんでした。1曲ずつ終わる度にリバーブをかけて、次の曲を回しました(笑)。ある意味ジョークみたいでしたが、それでも何とか成立させられたので、むしろクールでしたね。
・最近の音楽的インスピレーションと影響
TJO:最近よく聴いている音楽ジャンルや、注目しているDJ/プロデューサーはいますか?
Duskus:正直に言うと、ほとんどは僕の仲間たちです。親友のWaleedは本当にクールな作品を作っていて、彼からとても刺激を受けています。それからVillagerという素晴らしいアーティストもいますし、友人のPocketもそうです。要するに、主に仲間たちですね。本当にそうなんです。リラックスしているときはエレクトロニック・ミュージックをあまり聴かなくて、たいていはDJをしているか、仲間と一緒に曲を作っているかです。
Waleed
Villager
Pocket
・今後の展望とファンへのメッセージ
TJO:今後、Duskusとして挑戦してみたい音楽的な方向性やテーマはありますか?
Duskus:最近はDJをたくさんやっていますが、これからはライブに取り組んでみたいと思っています。まだ具体的にどうなるかは分かりませんが、シンセを使ったりしてその世界に入っていて、とても楽しんでいます。
僕の音楽はかなりチルなものなので、クラブでDJをするときはあまり自分の曲をかけないんです。人々はもっとヘビーなトラックを求めるので。でももしライブセットをやれば、自分の曲を好きなだけかけられるし、どれだけプログレッシブにしても構わない。それなら聴いてくれる人ももっと楽しめると思いますし、僕自身もそうです。まだ形を模索しているところですが、挑戦したいと思っています。
TJO:日本のファンへメッセージをお願いします。
Duskus:日本の皆さん、癒やされ続けてください。昨夜は本当に最高でした。またすぐに戻ってきます。できれば次はライブセットで。そして、もしかしたら「Healer Vol. 2」も……どうなるかはお楽しみに。
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初来日のステージで、観客と真正面から向き合い、音楽の旅を共有したDuskus。インタビューでは、自身の音楽的ルーツやFred again..との共作秘話に加え、自然からのインスピレーションや仲間との交流がもたらす癒やしについても語ってくれた。DJとしてクラブを揺らす一方で、彼の目はすでに「ライブセット」という次の挑戦に向けられている。
「Stay healed, Japan」と語った言葉には、彼の音楽が持つ優しさと未来への約束が込められていた。CIRCUS TOKYOでの熱狂を皮切りに、Duskusが再び日本のファンに届けていく次の物語に期待したい。