John Summit IG
NEWS

「アジアは2014年で止まっている?」ACRAZEの問題提起にJohn Summitが放った“宣言”とは

きっかけはEDCチャイナ後の投稿。ジョンサミが本気で語る「テックハウスでアジア・シーンに革命を」 そしてNYで自主フェス開催を発表

すべての始まりは、今年3月、EDCチャイナのステージを終えた直後のACRAZEの言葉だった。

ACRAZE「今、中国のEDCに来てるんだけど、ここに来るたびに、自分のプレイする曲に対する反応を見るのがいつも興味深いんだ。ミニマルとか、めちゃくちゃテックな曲をかけると、たいていどう反応していいかわからない感じ。でもそれって俺にとっては悪くないことで、DJって教えることに似てるから。新しい曲をプレイするのって挑戦だし、それが好きなんだ。

でも時々思うんだよね。新しい音が伝わらないのは、そもそもそういう曲をかけるDJが少ないからじゃないかって。アジアでは今も2014年あたりの定番サウンドが主流だけど、もっと多様な才能がブッキングされて、新しいサウンドが広がっていけば、きっと変わっていくと思う。アメリカのシーンと比べると、まだかなり遅れてる感じがするけど…俺のセットは響いてない気がしても、また呼ばれるし、たぶん気に入ってもらえてるのかな?笑」

そんな率直な“現場の実感”を、ACRAZEは自身のX(旧Twitter)で語った。この投稿が波紋を広げる中、すぐさま反応したのが、いま最も勢いのあるテック〜ハウスDJのひとり、John Summitだ。

John Summit「それはね、テックハウスのDJたちが「自分はクールすぎてアジアには行かない」みたいに思ってるせいで、ちゃんとしたシーンが育ってこなかったんだよ。俺が数年前に行ったときは、確かにポテンシャルは感じた。伝統的なEDMのDJたちは、アジアのシーンづくりに時間をかけてきたから、そっちのサウンドが大きくなるのも当然だよね。」

一見、ネガティブにも映るようなやりとりは、意外な方向へと展開していく。

ACRAZE「うん、だからこそ俺はチャンスがある限りアジアに行くようにしてる。テックハウスのシーンには、まだまだ伸びしろがあると思ってる。君(John Summit)も(彼のレーベル)『Experts Only(EO)』をアジアに連れて行くべきだよ」

John Summit「この冬はもっとアジアに時間をかけるのが目標だ!絶対にEOを連れて行きたい。絶対ヤバいことになる。」

注目すべきは、ACRAZEの指摘が単なる批判ではなく、変化への可能性と希望が込められている点だ。「アジアは遅れている」と断じるのではなく、「なぜ届いていないのか?」に向き合い、自ら現地へ向かうという姿勢に、彼のシーンへの愛がにじんでいる。アジアのクラブミュージックは長らくEDMが主流だったが、Z世代を中心に、よりミニマルで骨太なテックハウスやディープなサウンドへの関心が高まりつつある。
今回のやりとりは「テックハウス × アジア」という構図が、もはや語られる段階なだけでなく、「実行フェーズ」に入り始めたことを示しているのかもしれない。シーンを背負うが故に、彼らは傍観者では終わらないのだ。


そして時を経て7月。John Summitは、自身のレーベル Experts Only を冠した初の大型フェス開催を発表した。
イベント名は「Experts Only Festival NYC」。開催日は9月21日・22日、会場はニューヨーク・ランドールズ・アイランド。


本人が両日ともヘッドライナーを務め、Kaskade、Cassian、Green Velvet、Layton Giordani、LP Giobbi、Kasablanca、Ayybo、Roddy Lima らが名を連ねる。さらに、メインステージに加えて、エクレクティックでインディーなラインナップが並ぶ第2ステージも用意されるという。


このフェスの誕生も、彼の“ビジョン”に基づくものだ。彼はThe Hollywood Reporterにこう語った。「ずっと自分のフェスをやりたかったし、それが『Experts Only』を育ててきた理由なんだ。シカゴ(出身地)やマイアミも候補にあったけど、あの辺りはもうフェスが飽和してる。一方、ニューヨークは世界最大級の都市なのに、いま電子音楽のフェスがひとつもない。このマーケットには明らかな“空白”がある。やるなら、ここしかないって思った。」

2023年にElectric Zooが終了して以来、ニューヨークには看板となるEDMフェスが不在の状態にある。その空いたスペースを、John Summit自身の手で再び活気づけようとしているのだ。

この発表は、まさにACRAZEとのやりとりと地続きの文脈にあるだろう。現時点ではニューヨークのみでの開催だが、John Summit自身が語っていたように、いつか彼のレーベルがアジアに新たなエネルギーをもたらしてくれる未来もそう遠くないかもしれない。今回の一連の動きは、そんな未来を予感させるには十分すぎる期待が込められている。