Anymaがここ数年一貫して描いてきたのは、ダンスミュージックを「踊るための音」から、「没入し、体験するための表現」へと押し広げる試みだった。本作もその流れを汲む作品であり、静かに、しかし力強く脈打つベースライン、シネマティックな世界観を押し広げる荘厳なシンセのレイヤー、その上を漂うEJAEのヴォーカルは、メロディを前面に主張するというよりも、Anymaの世界観を拡張するかのように響く「静かな支配力」を持った仕上がりとなった。また「Out Of My Body」というタイトルも、Anymaがこれまで映像表現やアルバムコンセプトを通して追い続けてきた、「人間とテクノロジー」「感情と機械」の関係性というテーマを反映している。
本作において、EJAEの存在が果たしている役割は極めて大きい。彼女は2025年、Netflix映画『K-Pop Demon Hunters』のサウンドトラックで驚異的な成功を収め、一躍世界的な注目を集めたアーティストだ。歌唱と作詞・作曲の両面で深く関わった「Golden」は、アニメーション映画の楽曲としては異例のスケールでヒットを記録し、Billboard Hot 100で複数週にわたり1位を獲得。サウンドトラック全体も世界各国のチャートを席巻し、さらにグラミー賞の主要部門である最優秀楽曲賞にノミネートされるなど、驚異的な成功を収めた。この成功により、EJAEの名前はK-POPの“裏方”という枠を超え、世界中に広く認知されることになった。
一方、Anymaにとっても2025年はキャリアの中で特別な意味を持つ年となった。イタリア出身の彼は、Tale Of Usの一員としてデビューし、ヨーロッパのテクノ・シーンを席巻。主宰するAfterlifeレーベルを通じ、自身はもちろん、才能あふれる所属アーティストたちによる数々のヒット作を世に送り出し、メロディック・テクノという潮流を世界規模へと押し広げてきた。
さらに、三部作として構想されてきたアルバム『Genesys』シリーズの最終章『The End of Genesys』もリリースされ、「人間とテクノロジーの融合」という壮大なテーマにひとつの区切りが打たれた。ピラミッド前で開催され大きな話題を集めたエジプト公演をはじめ、数々のフェス出演、世界最高峰のeスポーツ舞台「League of Legends Worlds 2025」での共同クリエイティブディレクター就任、さらにOakleyブランド50周年を記念したパートナーシップの締結、Apple Vision Proプラットフォームでの新作没入型映像作品『The End Of Genesys – A Cybernetic Opera』の公開など、カルチャーイベントへの参加も積極的に行い、Anymaは2025年を通して「未来の音楽体験」を引き続き提示し続けてきた。
本作についてEJAEは次のように語っている。
「この曲は、まるで“魂が身体を離れる(Out Of My Body)”ような感覚をもたらす愛のつながりと、優れたダンス・トラックが人に与えるその感覚――その二つが重なり合う瞬間を捉えることを意図して制作しました。」
本作は、2026年初頭にリリース予定の最新アルバム『The End Of Genesys』デラックス・バージョンに収録される予定だ。今年、映画・映像シーンの“顔”とも言える存在となったEJAEを迎えたことで、来年Anymaが提示するであろう、より没入感あふれる多層的な作品や体験への布石としても機能している。2025年の締めくくりにふさわしい一曲と言えるだろう。