NEW RELEASE

John Summit新曲「Crystallized」で、2000年代エレクトロの荒削りなエネルギーをアップデート

John Summit, Inez - Crystallized

シカゴ出身のDJ/プロデューサー John Summit(ジョン・サミット)が、シンガー Inéz(イネズ)とコラボした新曲「Crystallized」をリリースした。




本作は彼のキャリアにおける大きな転換点といえる。ハウスを基盤にしながら失恋や別れをテーマに据え、Inéz のヴォーカルを前面に押し出すことで、従来のフェス志向の楽曲とは異なる一面を提示している。2000年代のエレクトロ・ハウスを思わせる力強いシンセと引き締まったリズムに、当時のインディー・ダンスを想起させるメロディやフロウが重なり、疾走感あるドロップと静けさを残すブレイクの対比が印象的な展開をつくり出している。



この曲は2025年夏の『Tomorrowland』で初披露され、その後『Outside Lands』をはじめとするフェスティバルで繰り返しプレイされた。正式リリース後にはSNSや配信プラットフォームで好意的な評価を集めた一方で、より大胆な展開を望む声もあり、反応は一様ではない。しかしその賛否の幅こそが、この曲の実験性と新しさを物語っている。



特に注目すべきは、Summit が公式声明で「2000年代のBlog House時代のエネルギーを新たなツイストで取り戻したい」と語った点だ。




「Crystallized」はJustice、Boys Noize、La Roux、MGMTらに代表される2000年代後半〜2010年代初頭のMyspaceや音楽ブログを中心に盛り上がった、エレクトロ/インディーダンス/Blog House へのオマージュとして位置づけられている。尖ったシンセリードや粗野なベースラインは、フレンチタッチやインディー・エレクトロ黄金期を思い起こさせるとファンの間で話題となった。ただし、それは単なる懐古にとどまらず、現代的なプロダクションで再構築されている点がSummitの独自性ともいえる。



彼のこうした時代感覚を敏感に取り込み、音楽に反映させる姿勢は以前から評価されてきた。同じくInézを迎えた「light years」では、近年世界的に盛り上がるUK Garage/Speed Garageの流れをいち早く取り込み、今年のメジャーダンスシーンを代表する楽曲となった。



今回のBlog Houseへのオマージュも、Dom DollaとKid Cudiの「Forever」や、BLOND:ISHやMarlon HoffstadtによるEmpire of the Sunの名曲「Walking On A Dream」のリミックスと同じく、2000年代エレクトロのムードを現代に甦らせており、この動きへの注目の高まりを示している。



ohn Summit は2020年の「Deep End」でシーンに登場し、「Human」や「Where You Are (feat. Hayla)」といったヒットを経て、2024年にはデビューアルバム『Comfort in Chaos』をリリース。ロンドン O2 アリーナやイビザでの公演を重ね、9月20日・21日にニューヨークで開催された自身のブランド・フェス「Experts Only Festival NYC」も成功させたばかりだ。



Inéz はドイツ・ザールブリュッケン出身で、ジャズを背景に持ち、デュオ ÄTNA として国際的に活動する一方、SolomunやDJ Kozeとの共演経験もある。その柔らかさと鋭さを併せ持つ声は、「Crystallized」の硬質なトラックに人間的な温度と独自のユニークさを与えている。



「Crystallized」は、2000年代エレクトロや Blog House の荒削りな要素を現代的に再構築し、John Summit の音楽的視野を改めて印象づける一曲だ。フェスティバルでの即効性と、リスナーの感情に訴える内面的なテーマを併せ持つ本作は、今後の彼の方向性を占ううえでも重要な存在であり、未来のシーンの動きを見据える鋭い視点と才能に、さらなる期待が寄せられている。