巷で、EDMが新たな音楽のスタイルだと騒がれ始めた2011年頃から早5年以上……(EDMシーンにはさまざまな意見がありつつも)世界各地で巨大マーケット化しているのは紛れもない事実のダンスミュージック・シーン。
そんな音楽シーンの未来を語っても話は尽きないですが、今回はトップDJたちがダンスフロアを盛り上げるときに使っているキラートラック(ピークタイムを飾る楽曲)の合間からのぞく、
元ネタのルーツを探る記事をお届けしたいと思います!
Zombie Nation – Kernkraft 400(1999年)
テクノ&ハウスの定番クラシック。印象的な単音ベースシンセの破壊力は、ジャンル・年代を問わず長年愛されてきました。
ゾンビ・ネイションはテクノDJとして幾度となく来日もしているので、ご存知の方も多いでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=VnTTj_DTZhU
同楽曲をEDMシーンではハードウェルとW&Wがマッシュアップしています。
https://www.youtube.com/watch?v=aN8zyzuQ6uo
さらにアーミン・ヴァン・ブーレンのDJセットでは、彼の人気曲“Ping Pong”と合体していますね。
Darude – Sandstorm(2000年)
“Kernkraft 400”は(どちらかと言うと)テクノ&ハウスシーンが出元ですが、こちらは当時のトランスシーンが生んだ名曲。アシッドベースをメインに押し出した至極の逸品。
スティーブ・アオキの「Tomorrowland」でのライブ映像。
18分40秒~。ダフト・パンク”Aerodynamic” + スティーブ・アオキ”Turbulence” + ダルード”Sandstorm”の3つをマッシュアップ。何でもありです(笑)
Porn Kings – Up To No Good(1996年)
アシッドテクノの大御所、ジョシュ・ウィンク”Higher State of Consciousness”から多大な影響を受け、誕生した90年代のアップリフティング・チューンの筆頭。
ビリビリの強烈303系リフ+ヒップなラップボイスのコラボで盛り上がり確定。
スウェディッシュ・ハウス・マフィアの2人による最強ユニット、アクスウェルΛイングロッソが、現在パワープレイするEDM版。
17分09秒~。若きテクニシャンDJマックジェイのリミックスなんですね。原曲を生かしつつも進化!
Faithless – Insomnia(1995年)
本国UKではヘッドライナー級、ベテラン・ダンスユニットFaithlessの代表曲。オリジナルの発表が1995年(今から20年以上前)ってのが凄い。果たして何百曲にサンプリングされたのか…?
超絶マッシュアップはハードウェルによるもの。40分00秒~。
楽曲が良い、MCがうまい、などはさておき、ハードウェルが絶賛されるひとつは、マッシュアップものの完成度が極めて高い点があります。
踊っている側には何がどうなっているかほぼわからず。セットを通して、ひとつのエンタテインメントのショーとして完成されてますね。
Daft Punk – Harder Better Faster Stronger(2001年)
オリジナルは、これぞダフト・パンクなエスプリが効いたフレンチディスコハウス。
ボコーダーボイスだけが抜き取られ、ダンスミュージックという大海原に出ていった、ネタもの界のマイケル・ジャクソン的な存在。
ちなみに、長年越えそうで越えられなかったヒップホップとハウスの垣根を消し去ったのが、この楽曲をネタに使ったカニエ・ウェスト”Stronger”(2009年)。
この辺からハウスを取り入れるヒップホップDJが増加(逆もまたしかり)。
テクノ&ハウスとヒップホップなどジャンルのボーダレス化、そこからEDMの誕生へと進んでいきます。
これらの楽曲に共通するのは、そう、もうお気づきかと思いますが、歪みの効いたマッドなベースサウンド、リフ & ボコーダーなど、エフェクト感を存分に施した音色をメイン・パートとして使用する、ということです。
数万〜数十万人規模のダンスフェスティバルで活躍するEDMトップクリエイター陣は、印象的なベース音や、ボイスなどが“キモ”ってことをわかっているので、こうしたサウンドを取り入れようとするのは必然であるわけです。
DJ Rolando aka The Aztec Mystic – Jaguar(1999年)
デトロイトテクノの名曲、DJロランドの”Jaguar”です。
これを“DJ Mag Top 100 DJs 2015”堂々のランキング1位のスーパースター兄弟ユニット、ディミトリ・ベガス&ライク・マイク(盟友ウメット・オズカンとの共作)が、ブート盤ではなくオフィシャル作品としてリリースしています。
単独ライブでは、いきなりヴァイナル・セットを始めたり、その上、そのセットがゴリッゴリのベルジャン・ハードコアなテイストだったりと、おじさん世代のハートもキャッチするディミトリ・ベガス&ライク・マイク。
まさか、まさかのデトロイトテクノ総本山的楽曲をカヴァーするなんて素敵。
最後に・・・
もともと、ダンスミュージックには様々なサウンド(元ネタ)を縦横無尽に取り入れる
「サンプリング」の概念があります。古今東西「ネタもの」「ブートレッグ盤」「ホワイト盤」などと呼ばれ、また、複数の楽曲をひとつにまとめあげてしまう、今で言う
「マッシュアップ」というワードによって、アーティストからアーティストへ、DJからDJへ、サンプリングの精神が受け継がれてきました。
あなたが大好きなEDMのアーティストが、プレイするその一瞬のフレーズの使い方で、そのアーティストのたどってきたキャリアやバックボーン、趣味嗜好までがみえてきます。
ルーツがわかれば音楽はもっと楽しくなりますよ!
Text by EDM MAXX編集部