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櫻坂46「Sakurazaka46 Remixes」徹底解剖 J-POP × クラブサウンドを再構築する6組の新鋭リミキサーとは?

世界6カ国から集結。櫻坂46の世界観を拡張した新進気鋭の海外プロデューサー達を紹介

「櫻坂46が世界仕様に進化」。そんな予感を感じさせる注目のリミックス企画が登場した。4月30日発売の2ndアルバム『Addiction』初回限定盤TYPE-Aには、「Sakurazaka46 Remixes」と題されたスペシャルトラックが収録されている。アメリカ、フランス、オーストラリア、韓国、スウェーデン、中国、世界6カ国から集結した気鋭の海外DJ/プロデューサーたちが、櫻坂46の選りすぐりの楽曲6曲をそれぞれのスタイルで大胆にリミックス。EDCやLollapaloozaに出演するオーストラリア出身のNinajirachiや、フランスの人気DJ Naeleckなど、単なる話題づくりでは終わらない本気の布陣で、実力派6組が参加。



原曲の持つメッセージや感情を大切にしながら、EDMやハイパーポップ、ハードスタイルなど多彩なジャンルに変換された今回の企画は、まさに「J-POP×世界のダンスミュージック」の新たな接点。聴き慣れた曲が思わぬ表情を見せる新鮮な体験が待っている。そんな櫻坂46の世界を拡張したアーティストを紹介していこう。



1. 静寂の暴力 -NURKO Remix- (ナルコ・リミックス)


アメリカ・ニュージャージー出身のNURKO (ナルコ)は、エモーショナルなフューチャーベースを武器に世界的な注目を集める気鋭のプロデューサー。クラシック音楽の素養と、最新のEDM/ベースミュージックを融合させた彼のサウンドは、NCSやMonstercatといった人気レーベルからリリースされており、ILLENIUMとの共作「Sideways」はBillboardチャートにもランクイン。Seven Lionsの「Senseless」のオフィシャルリミックスや、ARMNHMRとの「Won’t Make A Sound」などを通じて、その表現力の高さを提示してきた。またLost LandsやBass Canyonといったベースミュージック系フェスティバルへの出演経験も豊富だ。



原曲はもともとエモーショナルな感情を呼び起こすダンスミュージック寄りの一曲だが、NURKOはその世界観を保ちながら、フューチャーベース特有の美しいビルドアップとダイナミックなドロップで、さらにドラマティックな展開を与えている。壮大なスケール感と繊細な情緒を共存、そして増幅させたアレンジは、まさに「踊れるエモーション」。J-POPとダンスミュージックの接点を親しみやすく提示する、秀逸なリミックスとなっている。




2. 承認欲求 -Ninajirachi Remix- (ニナジラチ・リミックス)


オーストラリア出身のDJ/プロデューサー Ninajirachi(ニナジラチ)は、わずか24歳にしてLollapalooza、EDC、Hard Summerといった世界的フェスティバルへの出演歴を持ち、Charli XCXやCashmere Catとのツアーも経験した注目の存在だ。Nina Las Vegasが主宰する『NLV Records』の中核として現地の次世代クラブ・シーンも牽引。

アーティスト名は、ポケモンのキャラクター“ジラーチ”に由来。日本のゲームカルチャーやオタク文化への憧れ、自然界から得たインスピレーションをもとに生み出される彼女の実験的なサウンドは高く評価されている。2019年のデビュー以降、ISOxoとの共作やDeadmau5のリミックスを手がけ、Nike、Sega、Abletonといったグローバルブランドからもプロジェクトを依頼されるなど活躍の幅を広げてきた。2024年にはEP『girl EDM』を発表し、Rolling StoneやNMEといった主要メディアからも高評価を獲得。同年には東京・大阪で初の来日ツアーも成功させた。



今回のリミックスで彼女は、SNS時代の自己肯定感や葛藤を描いた原曲のメッセージを尊重しながらも、ハイパーポップの文脈で大胆な再構築を施している。ピッチを上げたボーカル、カットアップによる高揚感、疾走感あふれるトラックの中に、原曲の儚さと中毒性を巧みに溶け込ませたそのサウンドは、本来のテーマ性を壊すことなくネクストレベルのダンスミュージックへと昇華させた。

Ninajirachi自身も「去年初めて日本を訪れた時に、すぐに櫻坂46のファンになりました。リミックスの依頼をいただいた時は本当に光栄でした。自分のDJセットでこの曲をプレイするのがとても楽しみです。また日本に戻って、この曲をライブで披露できる日が待ち遠しいです!」とコメントを寄せており、単なるアレンジを超えた作品へのリスペクトと愛が込められている。




3. 何歳の頃に戻りたいのか? -Raiden Remix- (ライデン・リミックス)


韓国・ソウル出身のRaiden (ライデン)は、同国のEDMシーンを代表するDJ/プロデューサーのひとり。2013年にDJとして活動を開始し、2018年の平昌オリンピック閉会式でのパフォーマンスをはじめ、Ultra Music FestivalやTomorrowlandなど世界規模のステージにも名を連ねてきた。



元々はギタリストとしてキャリアをスタートし、そのバックグラウンドは彼の音楽性にも色濃く反映されている。SMエンターテインメントのEDMレーベル『ScreaM Records』に所属し、少女時代のYURIやRed VelvetのIRENEとの共演。さらにEXOのCHANYEOL、Lee HI、Changmoと手がけた楽曲「Yours」は、世界24カ国のチャートで1位を獲得するなど、K-POPシーンでも確かな存在感を放っている。



今回のリミックスでは、ロック調の原曲が持つ哀愁とノスタルジアな世界観を受けながら、煌びやかでスケール感のあるプログレッシブ・ハウス、さらにはビッグルーム・テクノ的なアプローチを取り入れ、よりフロアライクなダンス・トラックへアレンジした。




4. 自業自得 -devin Remix- (デヴィン・リミックス)


スウェーデンのアンダーグラウンドシーンから登場した新鋭アーティスト・devin ((デヴィン)は、ジャンルの垣根を飛び越えたサウンドで注目を集めている。スタッターハウスやグリッチポップ、エモ・レイブといったサウンドを自在に行き来する彼の楽曲は、SNS上でしばしばバズを巻き起こし、「next to you」や「NOT ANGRY」といった楽曲は数百万回の再生を記録。主要プレイリストにも多数ランクインし、現行レイヴ・シーンにおいて確かな存在感を放っている。


内面の苦しみをストレートに表現した鋭い歌詞と、攻撃的でエレクトロ・ビート・アレンジ、そしてサビでの高揚感あるポップな展開が見事に融合したダークで挑戦的な原曲を、devinはブレイクビーツ・ビートで疾走感をあおり、ジャージークラブビートを組み合わせたハイパーポップ的でユニークな刺激的なフロアチューンへ仕上げた。




5. I want tomorrow to come -Naeleck Remix- (ナエレック・リミックス)

フランス出身のNaeleck (ナエレック)は、DJ MagのTop 100に2度ランクインするなど世界的な評価を受ける人気DJだ。仮面を被ったミステリアスなキャラクターでも知られ、エレクトロ、ハードスタイル、ダブステップを巧みに融合させた攻撃的なサウンドで、数多くのフロア・バンガーを生み出してきた。



総ストリーム再生数は10億回を超え、ゴールドやプラチナ認定も多数獲得。自身のレーベル『Den Haku Records』を設立し、Timmy TrumpetやVini Vici、R3habらビッグネームとも積極的にコラボレーションを行っている。2023年には「最も国際的に活躍したフランス人アーティスト」第4位にも選出され、日本のアニメやゲーム文化への愛着から2010年代には東京でのDJ活動経験も持つ。


原曲が持つクラシカルなピアノ・イントロとドラマティックな展開をベースに、サビのエモーショナルなリフレインを軸に再構築。近年トレンドのハードスタイルやビッグルームテクノを見事に融合させ、壮大なシンセワークと轟くベースがフロア映えする強烈なバンガーに。攻撃的でありながらも叙情的な一面が共存するリミックスとなった。

Naeleckは本作にあたって「櫻坂46の曲をリミックスできて本当に嬉しいです。原曲が大好きで、聴いた瞬間に“クラブやフェスで盛り上がるリミックスにしたい”というインスピレーションが湧きました。」とコメントを寄せている。





6. UDAGAWA GENERATION -TSAR Remix- (ツァー・リミックス)

中国の動画配信サイトBilibiliで圧倒的な支持を集める中国系イギリス人プロデューサー・DJ Tsar (ツァー)は、アジアとヨーロッパのカルチャーを自在に行き来する、デジタルネイティブ世代の象徴的存在だ。クラブトラックとZ世代カルチャーを掛け合わせたユニークなスタイルで、サンプリングやボーカルチョップを駆使して独自のビジュアル・ミュージック・アートを生み出している。



今作はガールズグループらしいアップテンポな原曲をベースに、エフェクティブかつ緻密に刻まれたグリッチサウンドがカラフルなアクセントを添えている。UKハードハウスのサブジャンル「Donk (ドンク)」とハイパーポップ的な質感が融合。次世代のフレッシュな感性が同居したハウスへと昇華されており、そのキャッチーでインパクトのある断片的な音像は、まさにSNS世代とシンクロ。音と映像、感情が交錯する新感覚の一曲として、DJ Tsarらしい存在感を放っている。





世界各地から集まった新鋭リミキサーたちが、櫻坂46の楽曲に込められた感情や物語を再解釈し、フロアに響く新たな音の世界へと昇華させた「Sakurazaka46 Remixes」。このプロジェクトは単なる「海外進出」や「クラブ対応」といった枠にとどまらず、J-POPがグローバルへと広がる今の潮流の中で、新たなベクトルを提示する画期的な試みだと言えるだろう。

この実験的ともいえる挑戦に、参加した新進気鋭のリミキサー陣の選定にもキャスティングの妙が光る。櫻坂46がグローバルポップの最前線に向かっていることが証明された一作である。

4月には台湾で開催された「CENTRAL MUSIC ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025 in Taipei」に出演。さらに7月には、アメリカ・ロサンゼルスで行われる北米最大級のアニメ&ジャパニーズカルチャーイベント「AnimeExpo2025」への参加も決定し、今後、世界の舞台に向かっていく彼女たちの動向から目が離せない。