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EDMは世界で最も新しいユースカルチャー

現在世界中で大流行しているEDM(イー・ディー・エム)。それはElectronic Dance Music(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)のこと。いまやポップスやロックに匹敵する音楽になりましたが、ここではそんなEDMの魅力に迫ってみたいと思います!

EDMはただの音楽ジャンルじゃない!?

「ULTRA JAPAN」、「Electric Zoo」に続き、今年の10月には「SENSATION」が日本に初上陸。
いまや日本でも海外のビッグフェスが開催されるなど、世界と同じようなタイミングでEDMのトップアーティストのライヴを楽しめるようになってきました。
日本でも急速に拡大したEDMシーンではありますが、“EDMってなんだ?”という素朴な疑問がありますよね?

そこで、改めてEDMについて考えてみたいと思います。

まず、EDMとはただの音楽ジャンルとして使う言葉ではない、と思います。
もちろん様々な音楽誌やウェブサイトで、ジャンルとして扱われることもあるし、それは間違っているわけではないけれど、EDMはもっと広い意味をもった、いわばカルチャー(文化)なのです。

以前、EDMシーンのトップアーティストのひとりであるアフロジャックにインタビューしたときにも「EDMは単なる音楽ジャンルではない。世界的に最も新しいユースカルチャーだ」と言っていました。

つまり、ダンスミュージックを中心に、それに連動する大型フェスがあり、そこではフェス用のメイクやファッションが生まれ、さらにはビジネス的な部分でも現代社会にハマった健全な競争が起きている。
それはもはや音楽のジャンルというよりもカルチャーであると言えると思います。

RELIVE ULTRA JAPAN 2014 (Official Aftermovie)
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EDMを理解するためのキーワード、“フェス”と“非日常的空間”

EDMを語るうえで、欠かすことができないのが大型フェスの存在。
たとえば、ベルギーの「Tomorrowland」やマイアミの「ULTRA MUSIC FESTIVAL」は、数秒で数十万枚のチケットが完売することで有名です。

そんな2つのフェスだけでなく、その他のEDM系フェスにも共通するのが、巨大なセットと飛び交うレーザー光線、さらには花火が打ち上がったりと、とにかくスケールのでかいド派手な演出の数々。
人々がEDMに求めているのは、非日常的空間です。

それだけに、そんな場所でかけられる音楽もそれなりのものでなければならず、サウンドも空間的なビート、扇情的なメロディ、断続的に訪れるブレイクの瞬間、そしてDJたちはステージで煽りまくる……。
一部では全部同じようだとか、個性がないといった批判もあり、それもあながち間違いではないかもしれません。

しかし、それは“フェスで盛り上がる”という大前提のもとに制作された楽曲であり、EDMの良さでもあると思います。
しかもその中で絶えずトップアーティストたちによる競争があり、次々に新しい楽曲が生み出されています。

そういったことをふまえて考えてみると、きっと近いうちにさらなる進化があるのでは、なんてふうにも思います。

その一方で、現場では1曲ごとに次に何が起こるのかという期待が常に巻き起こっています。
そして、曲が変わり、展開が変わるごとにオーディエンスは両手をあげ歓喜します。
数万人もの知らない仲間たちと同じ場所で、同じ瞬間に、同じ感情を共有するその快感、そこにEDMの醍醐味があるのです。

同時に、そこではその場所、音楽に見合ったファッションや新しい楽しみ方が自然と生まれてくる、それも当然のことと言えるでしょう。

Tomorrowland 2014 | official aftermovie
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オーディエンスが生み出す、いろいろな楽しみ方

EDM MAXXでも紹介している、EDM系のフェスから生まれたユニークなファッションやメイク
そういったものが次々と生まれてくるのもEDMの特徴です。

代表的なものとしては、フラワークラウンやビジューブレスレットがあり、その他にも日々オリジナリティ溢れる楽しみ方が生まれています。
昨年開催された「ULTRA JAPAN 2014」でも、来場者たちがまるでハロウィンのような、ド派手な服装で遊びに来ていたのは本当に驚きでした(しかも、ほとんどが手作りであり、非常に手間がかかるものが多かった!)。

こうしたファッションやメイクは、誰かが何かしたらの思惑を持って誘導したわけではなく、ファン(オーディエンス)が自分たちで考えて生み出したもの
フェスという場所があり、アーティストはそこで盛り上がる音楽を制作し、ファンはその場を楽しむための方法を考えている……。フェス、アーティスト、ファン、この三者のバランスはとても良いと思います。

そこには“こうあるべき”といったルールもなく、とにかく自由
本来、音楽は自由であるべきものですが、ジャンルが細分化され、それぞれのシーンが形作られていくと、それぞれに約束事、マナーが生まれました。
パンクにはパンクの、メタルにはメタルの、それぞれ楽しみ方があります。
しかし、まだ新しいEDMにはそんなマナーに対する概念がほとんどなく、そのため誰でも入りやすい。
これまでダンスミュージックに親しんでこなかった人でも簡単に楽しむことができ、なおかつ新しい楽しみ方を作ることができる、そんな余白も十分に残っています。

つまり、これからのシーンであるということですね。
また、EDMを通じてハウスやテクノ、トランス、ダブステップなど、EDMに関連するジャンルの音楽に興味を持つ人もいると思います。

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ただ売るだけの音楽から、EDMは新たな形へ

EDMは、音楽に関するビジネス面でも新しさがあります。
EDMシーンで活躍する多くのアーティストは、フェスでオーディエンスを熱狂させるために曲を作るわけですが、そこにはヒット曲を作ろう、1曲作って儲けようという考えはあまりありません。

日本では、いまだにCDを売ろうと躍起になっていますが、EDMのアーティストたちは新曲をネットで公開し、SNSなどで無料で聴けるようにしています。
そして、そこでリスナーの反応を見て、良ければフェスでプレイするし、悪ければお蔵入りないしは修正します(レーベルとの契約によってはそうではないアーティストもいます)。

みんな、楽曲を軽く考えているわけではないし、結果的にいい曲が売れるというのは変わりませんが、楽曲を売って儲けるという今までのやり方ではなく、いい曲を作り、フェスでいいライヴを披露することで、大きな収入を得ているのです。

アメリカの経済誌:フォーブス誌が発表したDJの年収ランキングでは、カルヴィン・ハリスデヴィッド・ゲッタのようなワールドワイドヒットを連発するトッププロデューサーが上位に入っているものの、ヒット曲を持たないアーティストもたくさんランクインしています。

また、エレクトロニック・ミュージックのビジネス向けカンファレンス:IMSのレポート(IMS Business Report)によると、2014年の北米におけるEDMの市場は約19億ドル(1ドル=120円換算で約2280億円)以上だと報告しています。

しかも、その内訳はフェスやクラブの収益が16億ドル(約1920億円)で、一方でストリーミングなど楽曲販売の売上は2億2500万ドル(約270億円)となっています。
このレポートからも楽曲ではなく、現場で収益を得るビジネスモデルが確立していることは一目瞭然です。

今音楽業界は不況と言われ、それはリスナーが簡単に無料で音楽を聴ける環境ができてしまったことが1つの原因です。
しかし、不況ではあるものの音楽そのものは以前より聴かれているのが現状です。
EDMはそんな現在のビジネスモデルにフィットしていると言えるのです。

進化するカルチャーEDM、その今後は……

EDMについて様々な面から考えてみた結果、見えてきたのは“今の時代にあった音楽・カルチャー”ということ。
EDMが世界的に受け入れられたのは、楽曲やフェスを通して“みんなで一緒に楽しもう”というシンプルな思いが大きいと思います。

アーティスト側から発せられるメッセージも難しい説明はなく、ただただ“楽しんでくれ!”ということ。
だからこそ誰もが自由に楽しめるのです。

そんなEDMに関しては、何年も前からこのムーヴメントはもうすぐ終わるだろうと指摘され続けてきました。
しかし、予想に反してシーンは成長を止めず、正直どこまで拡大するのか予想できません。

ただ、EDMがどうなるにせよ、今音楽シーン全体で最も面白く、最も変化に富んでいるのはEDMに間違いありません。
これからもどんなスターが、どんなアンセムが、どんなコラボレーションが生まれてくるのか、とても楽しみです。

Text by Hideo Nakanishi

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