アメリカのDJ/プロデューサーGryffinのライブが2024年6月18日(火)東京・豊洲PITで、翌19日(水)大阪・GORILLA HALL OSAKAで行われた。
Photo by ほりた よしか
Gryffinは、重厚なクラブ・サウンドとポップで美しいメロディの融合、時にギターなどの楽器を操りながらのパフォーマンスで圧倒的な人気を誇り、今年に入ってからも「Ultra Music Festival」や「Coachella」「EDC Las Vegas」などの大型フェスティバルに軒並み出演。
2020年の単独公演、昨年のフジロックを経て行われた今回のジャパン・ツアーは、3rdアルバム『PULSE』のリリースを目前に控え、先日行われたインタビューでも「新曲も盛り込んでいきいたい」と語っていた中でのライブでもあったため、一体どんな新しいサウンドを届けてくれるのかファンの期待も高まっていた。
〈5月末に行ったGryffinのインタビューはこちら〉
ここでは東京・豊洲PITでのレポートをお届けする。
スタートは「Just For A Moment」のイントロバージョン。Gryffinのシグネチャーともいえる壮大なメロディーと歌で幕を開け、本人の登場を待ちわびていたファン達から大きな歓声が上がる。そこから一転し、NGHTMRE & Virtual Riot「Teardrop」や7月に待望の初来日を控えるダブステップ界の新星MARAUDAの「Umbra」、Dirty Audioの「NITE VZN」などハードなビートをマッシュアップでたたみ掛け、会場のボルテージは一気に最高潮に。MARAUDAの「Umbra」に至ってはRefilledによる四つ打ちのハードスタイルRemixを用いて、スタートの短い時間の中でもビートパターンにしっかりと緩急を付ける技ありな演出でハードさに拍車をかけていた。
一旦会場を落ち着かせ「Bye Bye」とSLANDER, Said The SKy「Potions」のマッシュアップでフューチャーベースの高揚感を煽った後に、再び「Just For A Moment」の歌が響き渡ると、歌い出しで何が来るか分かった観客達から大きな歓声が上がった。そこでGryffinは早速ブースに上がりギターの生演奏を披露。さらにMyonによる四つ打ちEDM Remixのドロップで会場は熱狂の渦に。序盤からライブセットならではの醍醐味を見せてくれた。
Photo by ほりた よしか
「Remember」とSteve AngelloとAxwellによるユニット=Supermodeのヒット曲「Tell Me Why (Meduza Remix)」をマッシュアップし、そこにSeth Hills「Eclipse」を繋げ「Best Is Yet To Come (if found Remix)」に至るなど、自身の曲だけでなくクラブヒットを大胆に盛り込み、DJとしてのアッパーな要素も惜しみなく披露。「Love Is Gone」の大ヒットで大型フェスのメインステージにまで上り詰めたフューチャーベース・シーンの盟友ユニット=SLANDERとの「All You Need To Know」でもギターを演奏し、フロアのボルテージをさらに高めていく。
後半にはZomboy & MUST DIE! 「Last One Standing」の激しいダブステップにシフトチェンジしヒートアップさせた後は、Bipolar Sunshineとの「Whole Heart」でメロディアスに会場を揺らす。そこからBPMを一気に上げドラムンベースへ。ドラムンベースは近年のEDMフェスで大物DJ達が必ずセットの中で1曲はかけるほどムーヴメントが起きているジャンル。Gryffinは、Marlon Hoffstadt「It’s That Time (Dimension Remix)」や、続く「Safe With Me」もSub Focus & Dimension「Ready To Fly」とのマッシュアップで長い時間ドラムンベースをプレイし、グルーヴを紡いでゆく。彼のライブの素晴らしいところはハードさとメロディアスの緩急でフロアをコントロールする表現力の高さだろう。ここでとても印象に残ったのが背景のLED画面に大きな桜の木が映し出され、メロディアスなドラムンベースに合わせて木が回転するVJ。エモーショナルな楽曲は映像との相性も良かったが、聞いた事のない楽曲だったのでこれも新曲かとますます最新アルバムへの期待が高まった。
場面はOdd Mob「LEFT TO RIGHT (Subsonic Remix)」を経て、BPMをゆっくり落としながらTeriyaki Boyz「Tokyo Drift」のリフで会場は休む間もなく次のピークへ。WeDamnzによる昨年数々の大型フェスでもプレイされたGorillaz「New Gold (Dom Dolla Remix)」とのマッシュアップでテックハウスのグルーヴへシームレスに繋がっていく。
一度音を切りマイクで観客を煽るGryffin。次に流したのは「Nobody Compares To You」で大合唱を誘う。一気にBPMが遅くなっても力強いビートとメロディで収まる事のない高揚感に、ここでもギターをかき鳴らし、サウンドはよりアグレッシブにワイルドにグラデーションを変化させていく。
そして流れはKygoとCalum Scottとの「Woke Up In Love 」へ。歌い続けるフロアの熱量をさらに誘導していくように後半はEDMアンセム=Alesso & OneRepublic「If I Lose Myself」 へとトランジションし、次の「Caught Up」で新時代のフェス・アンセムKnock2「Dashstar*」とマッシュアップ。この時会場の一部からは叫び声にも似た歓声が上がるほどの熱狂で、Knock2とISOxoの人気の高さを再確認する事ができた。
レイヴ・アンセム「Sandstorm」でテンションをキープし、新曲となるMAXとDisco Lionsとの「MAGNET」、そこからRita Oraとの「LAST OF US」で爽やかさを演出し、彼の初期傑作ともいえるYears & Years「Desire (Gryffin Remix)」へと繋がる。初期からのファンとしては最も聴きたかった楽曲の一つではないだろうか。こちらは昨年のテクノ・ヒットEli Brown「Be The One」とマッシュアップされ、その疾走感を保ったまま新曲「MAGIC」、トランシーなシンセが鳴り響くArmin van Buurenとの「What Took You so Long」へと勢いを増していく。インタビューでの「トランスが昔から大好き」と言う発言を証明するかのように、近年のレイヴ回帰、BPMが早くなっているムーヴメントもしっかり押さえながら、自身のメロディアスな楽曲にそれを取り入れ、高揚感を保ったままテクノの緊張感も同時にミックスに盛り込む。DJとしての実力も本物だ。
そしてCalvin HarrisとEllie Gouldingの「Outside」からトランシーな空気を裏切るようなSubtronics「Alien Communication」のハードなダブステップで、その意外性にフロアはまたも盛り上がっていった。ここからは少し毛色を変え、Disclosure「You & Me (Flume Remix)」の静けさと狂気を帯びたディープなダブステップから「Lose Your Love」とRL Grimeのトランス meets ダブステップな「Runner」で静と動のグルーヴの弧を描きながら、Jason Ross、Calle Lehmannの「After You」へと着地し、ギターを握り締め再び大きな見せ場を作り上げた。
Biography
日本人の血を引く人気急上昇中のDJ/プロデューサーで良質なメロディーと共に多彩な楽器を操るダンス・ミュージック界に突如現れた超新星グリフィンことダン・グリフィス。
マルーン5「Animals」やイヤーズ&イヤーズ「Desire」のリミックスにより早くからその類まれな才能を世に知らしめてきたプロデューサー。世界がグリフィンを知るきっかけともなった米カリフォルニア州で行われたSnowGlobeミュージック・フェスティバルでは幼少期から始めた確かなスキルを持つギター、ピアノに加えドラムパッド、シンセサイザーを屈指した圧巻のライヴ・パフォーマンスを披露。成熟した産業ともいえるダンス・ミュージック界の新しい時代の到来を誰もが予感した。「Feel Good」や「Tie Me Down」等のヒット曲のリリースと共に年々規模を拡大し続ける北米ツアーでは地元Bill Graham Civic Auditorium(収容人数8,500)での単独公演を早々にソールド・アウトさせ、その勢いのまま2年振りの出演となる2019年のコーチェラに2週連続で出演!サハラ・テントに集結した5万人以上のファンを熱狂させた。3rdアルバムとなる『PULSE』が近夏リリース予定となっている。