大注目アーティストの日本初インタビュー、ここに実現!!
トロピカルハウスというネーミングから、ファーストアルバム『Cloud Nine』、EDMシーンについてまで、トロピカル王子=カイゴ(Kygo)が故郷ノルウェーから、いろいろ語ってくれました。
——幼い頃に日本に住んでいたそうですね。
実際に日本には住んでたわけじゃなくて、1か月間ほど、家族と日本で過ごしたって感じかな。
ブラジルにもいたし、生まれたのはシンガポール……でも人生の大半はノルウェーで過ごしてきたよ。
——北欧のような寒い国からトロピカルサウンドが誕生した理由というのは?
何でだろうね。僕にも分からないんだ(笑)。
僕はスタジオで楽しみながら音楽を作っていただけで……いろんなことを試しているうちに、最終的に今のサウンドに行き着いたって感じかな。
いいサウンドが出来た!と思ったのがコレだった。いいフィーリングだし、ハッピーなバイブを持っている。
ハッピーな音楽から夏を連想する人って多いよね。1年のうちで、一番ハッピーな季節といえば夏だから。メロディなんかも、夏のバイブがあると思うんだ。
——いつもトロピカルハウスを引き合いに語られますが、トロピカルハウスという呼び名に関してはどう思っていますか?
いいんじゃないかな…って思うよ。サウンド的にもそのフレーズは言い当てているし、確かに僕の音楽にはトロピカルなムードが溢れているから。
パンフルートやボンゴ、スティールドラムといったカリビアンな楽器をいっぱい使っているし、そういったサウンドから影響を受けている。トロピカルハウスという表現はいいんじゃないかな。
ただ僕自身は、その音楽だけに限定されたくないという気持ちもあって、やってる音楽の全てがトロピカルハウスだとは思われたくはないんだ。
いろんなタイプの音楽を作るプロデューサーだと自負している。実際アルバムにはトロピカルハウスではない曲も収録されているよ。
——トロピカルハウスの前には、プログレッシブハウス系の曲を作っていたそうですが、どういうわけでスローなBPM(演奏のテンポを示す単位)になり、現在のようなスタイルに落ち着いたのですか?
プログレッシブハウスに飽きちゃったんだ。聴く分には今でも好きだけど。
でも、もっとディープハウスやノルウェー産ハウス的なサウンドを聴くようになり、そのうちさらにスローな曲やチルハウスを聴くようになった。
そしたら自分で作る楽曲も、どんどんスローになって、100 BPMくらいになっていった。
快適なテンポじゃないかって思うんだ。自宅で、愛車の中で、どこにいても、リラックスして耳を傾けるのにピッタリじゃないかな。
スローな楽曲を作るようになってから、パッセンジャーの“Let Her Go“のリミックスでそれをやったら、反響が大きかったんだ。みんなも、気に入ってくれて、それからこのスタイルでやっている。
——EDMフェスやダンス系フェスでDJをする際には、少しテンポを上げなきゃ、とか考えますか?
イベントによっては微調整も必要かな。フェスによって少しアップテンポを増やしたりはするよ。
逆に、自分がメインのライブでは、これが僕の音楽だ、自分のスタイルを貫くって感じかな。状況によって違っている。
フェスだとオーディエンスをちゃんと見て、どういうタイプの音楽に反応しているか、しっかり見極めなきゃね。
とはいえ、たとえフェスでも、ちゃんと僕もラインナップに入っていて、楽しみにして来てくれるんだから、僕の音楽をしっかりプレイしなきゃ、とも思うんだ。
自分の曲もいっぱい掛けるよ。そのためにお金を払って、みんな来てくれているわけだから。
——EDMフェスに出演しはじめた頃には、最初は戸惑ったりは?
メインステージに出るようになった時には少し戸惑ったよ。それまでサブの小さなステージに出ていて、ちょうどいい感じだったんだよね。
オーディエンスもすごく楽しんでくれて、僕の音楽が、すんなり受け入れられていた。
でも、いざメインステージに出るとなった時、妙な感じはあったよ。
それまで自分の音楽がああいうEDMフェスのメインステージで掛かるなんて想像すらしたことなかった。EDMフェスでスローな音楽を掛けるなんて、ちょっと考えられなかったんだ。
みんなもっとハードで激しいのを望んでいるのを知っていたからね。
最初の頃は、ちょっと懐疑的だったけど、終わってからの反応がすごく良かった。みんなもすごく楽しんでくれたようだったんだ。
——ノルウェーのクラブシーンに関してはどうですか? アムステルダムなど盛んな都市もありますが。
だんだん大きくなってきているのは確かだよ。アムステルダムほどじゃないけど成長はしている。
ノルウェー出身のプロデューサーも世界的に活躍しはじめていて、すごく嬉しいよ。
これまでノルウェー出身で海外で活躍するアーティストはあまりいなくて、目立たなかったから、すごく興奮してるんだ。
ノルウェーにはいい音楽シーンがあるし、才能ある音楽アーティストも大勢いる。そういう人たちがノルウェーだけじゃなく、世界に出て行くのを見るのは嬉しいよね。
——ファーストアルバム『Cloud Nine』のテーマを教えてもらえますか?
アルバムにテーマがあるというより、この1年半の間に制作してきた音楽の中からベストな作品を選んだって感じだよ。
『Cloud Nine』(=至福の状態)とタイトルに付けたのは、聴いた人にハッピーな気持ちになってほしいから。ハッピーな音楽だし、寛ぎながら楽しめる。
いろんなシチュエーションで聴いてもらえる音楽だし、聴いた人もハッピーになれると思うんだ。
——様々なタイプのシンガーたちが参加(ジョン・レジェンド、フォクシーズ、ラビリンス、コーダライン他多数)していますが、何か共通点や選んだ基準は?
声を聴いた途端に「あ、あの人だ!」とすぐに分かるようなシンガーやアーティストだね。ジャンルやスタイルに関わらず。
だからこのアルバムに参加している人たちは、みんなユニークな声を持っていて、歌い始めた途端すぐさま顔が浮かんでくる。そこを一番重視したかな。
——特にお気に入りのトラックはありますか?
全ての収録曲が好きだよ。全曲、苦労して作った曲ばかりだから、1曲を選ぶっていうのは難しいよね。
う〜ん、でも“Fragile feat. Labrinth”は、これまでに僕がプロデュースしてきた曲とは全然違っているから好きかな。
あと、ほとんどアコースティックとも言える”For What It’s Worth feat. Angus & Julia Stone“とかね。
これも発表してきた曲とは全然違っていて自分でもよく聴いている。
みんなからの反応の良い曲という意味では“Carry Me feat. Julia Michaels”の人気が高くて、よく再生されているようなんだ。
——将来的には、DJ活動と音楽プロデュースのどちらを重視していきますか?
音楽制作がとにかく好き。DJと音楽制作のどちらかを選ぶとすれば、スタジオでの音楽制作の方だね。
でも理想は並行してやっていくこと。好きな音楽を制作して、それをみんなの前で披露するというのが、続けられると嬉しいな。
——最後に今後の予定を教えてもらえますか?
ヘッドライナーツアーをやって、8月にはホームタウンのベルゲンで僕の主宰するフェスを開催する。
その後、またアメリカ、ヨーロッパをツアーして、できれば早く日本にも行きたいと思っているよ。
——2016年とか?
できれば今年中にと思っているけど、もしかしたら来年になるかも。
でも、突然急に話がまとまったりすることもあるから、それまでアルバムを聴いて待っててね!
*本記事は「ULTRA JAPAN 2016」出演決定前のインタビューです。
Kygo
Cloud Nine
Sony Music Japan International
2016年6月29日発売/1,800円(税別)
www.sonymusic.co.jp/artist/kygo/
Text by Hisashi Murakami