オランダで生まれたハードスタイル。それは、とにかくBPM(スピード)が早く、それに相まる重いキックや激しいベースライン、はたまた泣きのメロディ。

現在は様々な形へと進化し、EDMの流行とともに、世界各地で盛り上がっています。

そんなハードスタイル・シーンのなかでも、世界的な活躍を見せているのが、このフロントライナー。

当初アブジェクト名義で活動を開始した彼は、シーンを代表するヘッドハンターズとともに制作した“Scantraxx Rootz”のヒットで大きな話題に。

その後、フロントライナーとしてリスタートし、“Never Come Down”、“I’m The Melodyman”、“Halos”(featuring John Harris)”といったアンセムを発表。一躍シーンでも屈指の存在になりました。

今回は、そんな現在のハードスタイル・シーン牽引するフロントライナーにハードスタイルのこと、EDMのことなどいろいろと聞いてきました!

——まずは、ハードスタイルにハマったきっかけは?
僕は、2005年にその存在を知ったんだ。
ちょうどそのころハードスタイル全体のクオリティが上がってきていて、メロディの要素も増えていたので、すごく興味をそそられてね。
スタジオでデモを作って、それをDJなどに送って……そこから僕のハードスタイルの人生が始まったよ。
あのエネルギーとメロディの虜になってしまったんだ。

——最初に契約したのは21歳だったとか。そのときの気分は?
ハードスタイルで一番のレーベルだったScantraxx Recordsと契約できたこと、そこから自分の曲をリリースできることは本当にスゴいことだったよ。
当時、Scantraxxはイベントもたくさんやっていて、そこに出演する機会ももらえたんだ。

——その後、たくさん曲を発表してDJとしても活躍。ターニングポイントになったのはいつ?
2012年にレーベルから独立して、自分のレーベルを始めた。それが僕にとってのターニングポイントだね。
当時の僕は自分のやりたいことができてなかった、だからそこから自分を開放したんだ。
自由なマインドで自分の作りたいものを作るようになったんだ。それは、ハードスタイルにも言えることで、多くのDJが独立して、すごい勢いで活躍し始めたからね。
みんな自分のソーシャルメディアを持ち、自分のプラットフォームを持つようになったから、レーベルをそこまで必要じゃなくなったし。

Frontliner – Never Come Down (Emporium 2012 Anthem)
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——ハードスタイルの魅力とは?
BPM、エネルギー、そしてファンのこのジャンルに対する熱い思いだね。
彼らはこの音楽を本当に愛していて、みんな1つのライフスタイルにしてる。
思うに、ハードスタイルはイベントやパーティに最も適した音楽だ。実にユニークな音だよね。
僕のライヴでも、みんな本当にクレイジーになってくれるんだ。

——パーティ・ミュージックというのは興味深いね。人によっては違うジャンルを思い浮かべるよね。
僕が言うパーティ・ミュージックは、人々がその瞬間、その一瞬にすべてをかけて爆発するということさ。
ハードスタイルは、どのジャンルの音楽よりもその爆発力に満ち溢れていると思うんだ。
今ではハードスタイルもいろいろなジャンルに細分化されていて、インダストリアル系のロー・スタイル、メインストリーム、そしてポップなEDM系のサウンド。これはラジオ向きなものだよね。
でも、この3つが今のハードスタイルにおける3つの大きなジャンルだよ。

——あなたが音楽の中で重要視してるものは?
僕にとってはメロディがすべてだよ。それが僕の語りたいストーリーを語ってくれる。
そして、メロディは文章と一緒で、意味を持たなければならないんだ。
それは子供のころから好きだし、本当に大事なものであり、いつも僕の中にはあったものだよ。
ハードコア、トランス、ハードスタイルなど様々な音楽を作ってきたけど、メロディでしか出せない感情的な表現は、僕にとって絶対に必要なものなんだ。

Frontliner feat. John Harris – Halos
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——世界的なハードスタイルの盛り上がりはどう?
徐々に広がっているとは思うよ。
だけど僕が思うに、やっぱりそれぞれの国にそれぞれのハードスタイルのヒーローが必要だね。それがないと本当の意味での人気は出ない。
人気のあるいいハードスタイルDJも、ほとんどがオランダ人で、何人かイタリア人がいるぐらいだからね。
日本でも日本のヒーローが必要だよ。でないと広がっていなかない。毎回、僕が来ていても面白くないと思うしね(笑)。
ただ、僕の感覚ではアジアの人たちとスペイン人はハードスタイルが好きだと思う。

——世界的に見たら、今はEDMが全盛だけど、それについてはどう思う?
そもそもEDMというのはエレクトロニック・ダンス・ミュージック、すべてのジャンルのダンスミュージックのことだよね。
だから、ハードスタイルはEDMなのか、僕自身その言葉の意味には混乱してるんだよね。

——ということは、あなたもEDM DJでもある?
でも、それってDJによっては嫌がる人もいると思う。
僕は特に思わないけどね。元々穏やかな性格だから(笑)。

——一般的には、EDMは「ULTRA」や「Tomorrowland」のメインステージでプレイしている音楽のことを指すよね。
僕はそのステージでプレイしたことはないけど、カナダのあるイベントではダッシュ・ベルリンの直後にプレイしたことがあるよ。
それがEDMイベントというなら、僕もEDM DJなのかもしれないし、もうわけわからないよね(笑)。
強いて言うなら、EDMはビッグハウス・ルームのことを指しているのかな。

——それぞれ独自のEDMの解釈がある?
そうだね。同じ音楽でも、立場によって見方が変わってくると思うしね。

——オランダでEDMという言葉はよく使う?
あまり使わないね。大きくわけるとハウス、またはハードスタイルとしか言わないかな。
そして、その大きなジャンルを細かくわけていく……それが一般的かな。
オランダ人は本当に細かいジャンルわけをしてるよ。

——人気が出てくるといろいろなオファーが来て、ときにはやりたくないこともやらなくちゃいけない時がくるかもしれない。そういったことについてはどう思ってる?
その通りだと思うよ。そうなったら1つの決断をしなくちゃいけないと思う。
妥協するのか、自分の音楽を作り続けるのかね。
だけど、オファーが来るのはその人が僕の音楽が好きだからこそのことで、そうであれば本来自分のやり方を変える必要はないよね。
たとえば、僕は初音ミクでトラックを作ったけど、あれは市場を意識したわけじゃなく、本当に面白いと思ったからやったしね。
基本的に、アーティストはビジネスのことを考え始めたらおしまいだと思う。
スタジオでは純粋な気持ちでいないといけないよね。

初音ミク – 千本桜 (Frontliner Remix)
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——世界中でプレイをしているけど、ステージ上で最も意識することは?
チケットを買って見に来てくれた人たちが、本当に楽しい時間を過ごしてくれることしか考えてないよ。

——ライヴセットでのお気に入りのトラックを3曲教えて。
どの国でプレイするかにもよるけど、オランダでは“Weekend Warriors”、“Melody Man”、そして“Lose the Style”だね。
“Melody Man”は僕を知る上で本当にいい曲だと思うよ。“Lose the Style”はハッピーな感じがいいね。

Frontliner – Weekend Warriors (THW Video Clip)
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Frontliner – I’m The Melodyman
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Frontliner Ft. Ellie – Lose The Style
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——最後に、日本の印象と日本のファンへのメッセージを。
日本に降り立った瞬間に、飛行場でファンが待っていたのは本当にびっくりしたよ。
今回初来日なのに、みんな僕の旗を持って、シャツも着てくれて。本当にびっくりだった……。
それにみんな優しいしね。東京はすごく近代的だし、すぐに溶け込めそうだよ。

※このインタビューは2015年2月に行いました。

MUSIC CIRCUS’ 15
会場:大阪ATCホール
日時:2015年10月11日(日)9:30開場/10:00開演
出演:BLASTERJAXX, Ummet Ozcan, Frontliner, Yves V, DJ BL3ND, 3LAU, Merk & Kremont, YOJI BIOMEHANIKA, ALEX KIDD, ΛUDIØFR€Q, ACTI, Bart Claessen, Tempo Giusto, Mark Sherry, MC Stretch and more
http://music-circus.jp/

Text by Tomotaka Hoshide