Diplo, BLACKPINK
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Diploが語る、BLACKPINK「JUMP」がMajor Lazerの曲から“世界的ヒット”に変貌するまで

元々Major Lazerのために書かれた曲が、Ca7riel & Paco Amorosoを経て、大ヒットK-POPに。「Jump」の知られざる舞台裏。

2025年7月11日、BLACKPINKが約3年ぶりにリリースした新曲「JUMP」が、Billboard Global 200およびGlobal Excl. U.S.の両チャートで1位を獲得。統計的にも“世界で最も聴かれている曲”となったが、その裏には、意外なルーツと数々の紆余曲折があった。プロデュースを手がけたDiploがBillboard誌のインタビューで語った舞台裏を、ここで紹介したい。



実はこの曲、もともとはDiplo率いるMajor Lazerのために書かれたものだったという。

Diplo:「でも僕たちはリリースしなかった。今思えば、それで良かったんだ」

「JUMP」の起源は、2024年1月のマイアミにあるSony Studiosでのライティング・セッション。Diploと、Major Lazerのメンバーであり彼のプロダクションの要でもあるApe Drums、そしてShakiraの「Bzrp Music Sessions Vol. 53」などで知られるアルゼンチンのプロデューサー・Zeccaが集まり、ラテン音楽を制作するためのセッションが行われた。しかし当時Diploは、2000年代初頭のエレクトロクラッシュを代表するFischerspoonerの「Emerge」のような、アシッド風ポップも作りたいと考えていた。

Diplo:「『Emerge』みたいなアシッド風の曲を作って、Major Lazerで出して、ボーカルも入れて、楽しくてハッピーなものになるはずだった」


その後この曲は、アルゼンチンのデュオCa7riel & Paco Amorosoに託され、彼らとともにアレンジを進めてレコーディングされた。彼らは先日フジロックで来日し、日本でも大きな人気を集めたが、当時は世界的な知名度はそれほど高くなかった。しかし、2024年10月のNPR「Tiny Desk Concert」(現在3,900万再生)をきっかけに大ブレイク。ジャズ、ラテン、ソウルを融合した彼ら独自のスタイルが世界的に注目を集めるようになり、その音楽性はこの曲の方向性とは合致せず、最終的にリリースは見送られた。


しかし、Diploは諦めなかった:「いろんな人に聴かせて、書き直して、何度も作り直した。このアイデアは絶対に形にしたかったんだ」

その後、Major Lazer名義で出すことも考えたが、楽曲は意外な形で転機を迎える。BLACKPINKのクリエイティブディレクターであり、2NE1やBIGBANGなどのヒット曲を手がけてきたTeddy Parkとのセッションでこのデモを聴かせたところ、彼は即座に反応したという。

Teddy Park:「これはクレイジーだけど完璧だ。今、こういう急進的なサウンドが必要なんだ」

その一言をきっかけに、楽曲はBLACKPINKの手に渡った。「JUMP」は実に多様なジャンルを横断する“奇妙な”曲だ。同時に、ジャンルに縛られないクラブトラックでもあり、Diploが掲げる「メインストリーム・ポップにアンダーグラウンドの音を持ち込む」という感性の最新形でもある。コーラスは、1997年のレイヴ・アンセム、Da Hool「Meet Her at the Loveparade」へのオマージュを感じさせる。


Diplo:「スピード・ガラージとトランスに加えて、ドロップのベースラインはゴアトランス風。ドリルやジャージークラブにも展開するし、バイーア発祥のブラジル音楽のフィルもある。終盤はハードテクノ、最初のドラムは90年代ユーロポップ風。ギターとホイッスルのラインも入ってる」


Diploによれば、このようなジャンルの混合は、多くのポップスターであれば拒否される内容だという。しかし、BLACKPINKは違った。

Diplo:「アデルに“トランスとジャージークラブの曲があるけど…”なんて言ったら即却下だよ(笑)。でもBLACKPINKは、“人々を驚かせたい”と言ってくれたんだ」

こうして「JUMP」は、BLACKPINKにとって約3年ぶりの新曲として正式にリリースされた。なお、2025年4月にリリースされたJENNIEのソロ曲「like JENNIE」にも、Diploは共同制作者として関わっている。



最終的なプロデュースは24、Teddy、Diploが担当。クレジットにはDiplo、Ape Drums、Zecca、Teddy、BLACKPINK常連の24、さらにスウェーデンのZikai、UKのClaudia Valentina、ドイツのJumpa、Malachiii、Jesse Bluuなど、国際色豊かなメンバーが名を連ねた。

曲の長さはわずか2分45秒だが、サビやアウトロには現在最も流行しているテクノの要素が詰め込まれている。Charlotte de WitteやSara Landryが牽引するシーンとの共鳴も感じられ、BLACKPINKが新たなリスナーをクラブカルチャーへと導く“橋渡し役”となる可能性もある。


Diploは現在、ツアー活動を控え、制作に専念している。その背景には、今のハウスシーンに対する倦怠感もあるという。

Diplo:「今のハウスは、金持ちの年配者が“アンダーグラウンド風”を安全に楽しむだけの場所になってしまった。音楽は“人を驚かせる”ものに戻るべきだ。この曲は、その原点を思い出させてくれる」

そして、この「JUMP」こそが、まさにその信念を体現する一曲となった。

Diplo:「『JUMP』は、2026年のサウンドを先取りしている。今のチャートはどれも焼き直しばかり。この曲が響いたのは、“驚き”があるからなんだ。僕の目標は、すべてのジャンルを破壊すること。誰も許さないような音を混ぜ、限界を押し広げる。それが僕のやってきたこと。そして…それってまさに、K-POPがずっとやってきたことだろ?」

BLACKPINK、そしてDiploが手を組んだ「JUMP」は、ジャンルも常識も軽やかに飛び越え、挑発的で前衛的なアンセムとして、2025年を象徴する一曲となるだろう。