ここ数年、様々な場所で耳にするEDM(イー・ディー・エム)という言葉。それはElectronic Dance Music(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)の略で、基本的には文字通りエレクトリックなダンスミュージックの総称です。

ただ、そう言ってしまうと機械で作ったデジタルな音楽は全部EDM?と思うかもしれません。それもあながち間違いではありませんが、近年世界的なムーブメントとなっているEDMは、よりアッパーでエレクトリックなダンスミュージック。数万人、数十万人規模のフェスでみんなで盛り上がれるような、ポップスやロックに匹敵するサウンドです。大雑把ですが、ジャンル的に言うとエレクトロ・ハウスやプログレッシブ・ハウス、そして派手めのダブステップになります。最近ではさらに進化して、その他のジャンルの音楽も指すようになっていていますが、それはまた追々・・・

そんなEDMは、音楽界でも最大のビッグマーケット、アメリカを中心に発展し、いまや音楽の域を超え、カルチャーの1つとして世界的に認知されています。その発祥は諸説ありますが、現状のEDMムーブメントのパイオニア、そのブレイクの立役者としてはデヴィッド・ゲッタ(David Guetta)が有名です。今年は「ULTRA JAPAN 2015」に来日決定してますね! とても楽しみです。

彼はもともとハウスのDJ/プロデューサーでしたが、2000年代後半に、よりアッパーなサウンド(今のEDMの流れになるもの)を発表。2009年に発売したアルバム『One Love』では、ニーヨやエイコン、リアーナといった、世界的ビッグアーティストをフィーチャーし大ヒット(全米チャート入り!)しました。その後もマドンナやクリス・ブラウンなどともフィーチャリング。ポップミュージックと連動することでEDMをクラブ(アンダーグラウンド)から一躍メジャー(一般的なもの)へと押し上げたのです。

そして、EDMは徐々に世界屈指の音楽チャート:ビルボードの上位を独占していき、2013年にはそこに“Electric Dacne Chart”なる専用のカテゴリができるほど、世界の音楽シーンを席巻します。世界にも最も名誉のあるグラミー賞でも、ティエスト(Tiesto)やスクリレックス(Skrillex)等、EDMアーティストが数多くノミネートされるなど、EDMは世界の音楽シーンおいて、もはやなくてはならないものとして確立したわけです。

David Guetta”Play Hard ft. Ne-Yo, Akon”


一方、EDMを語る上でももう1つ忘れてはいけないのがフェスティバル。EDMはフェスともリンクして盛り上がってきた一面もあります。

もともと、音楽フェスと言えばロックが主流でしたが、EDMは今やそれに勝るとも劣らない人気っぷり。EDMフェスの代表的なものとしては、アメリカはマイアミで生まれ、現在は世界各国で行われる「Ultra Music Festival」、ベルギー発の「Tommorowland」、さらにはラスベガスで行われている「EDC」など多々ありますが、そういった人気フェスは毎回全世界から30万人以上を動員し、チケットも1日と言わず数十秒で即完売するほどの人気を誇っています。ちなみに、各フェスは終了後アフタームービーというレポート映像をYouTubeなどで配信しており、その再生回数も脅威的! 例えば2012年の「Tommorowland」はその数なんと1億2000万回以上!

Tomorrowland 2012 official aftermovie


現在では、もはや毎週末というくらいに世界各地でEDMフェスが開催され、EDMの拡大に大きく貢献しているわけですが、そこからは音楽面のみならず様々な文化が生まれています。EDMフェスでは、ただ単純にDJがいてプレイするというものではなく、それこそDJのうしろには大きなスクリーンが用意され、ステージには電飾バリバリの超大型LEDが数多く設置。ド派手な演出で来場者たちを圧倒しています。そういった映像や演出面においても世界最高峰の技術が集結し、最強のエンターテインメントを生み出しています。さらには、遊びに来る大勢のオーディエンス(お客さん)たちも、それぞれ思い思いのファッションで来場するため、そこからフェス・ファッションなる様々なスタイルが生まれています(フラワークラウンやフェイス・ペインティングなど)。EDMがカルチャーたる由縁もそんなところにあるわけです。

音楽シーンにしてみれば、これまでも多くの流行が生まれてきましたが、このEDMムーブメントは世界的メディアが“史上最大の音楽ムーブメント”と評するほど、いまや大きなものとなりました。近年EDMの世界的な市場は数兆円にのぼると言われ、それを裏付けるかのようにEDM DJたちの収入も爆発的にあがっています。アメリカの経済誌フォーブスによると2014年最も稼いだカルヴィン・ハリスが6,600万ドル(現在のレートで換算すると約79億円!)。次いで前述のデヴィッド・ゲッタが3,000万ドル、3位のアヴィーチーが2,800万ドルで、トップ10に入ったDJの総収入額はなんと約2億6,800万ドル(約322億円!)。2013年の2億4,100万ドルから約11%のアップと、つまりは年々伸び続けているのです。彼ら多くのDJたちは、たった一晩で数千万円を稼ぎ出し、楽曲制作やプロデュース業など多忙を極めることもあって移動はすべて自家用ジェット。そして、プライベートでは世界的アーティストや女優と交際しゴシップ誌の一面を飾ったりと、DJはもはや俳優やスポーツ選手と肩を並べる世界的スーパースターとなっているのです。

ここ日本では、EDMはクラブに遊びにきている人や流行に敏感な人たちの間では以前から知られていましたが、昨年「electrox」や「ULTRA JAPAN」といったフェスが開催され、巷では2014年=EDM元年とも言われています。
世界的に見たら、音楽&文化的な意味合いはもちろん、経済的にも絶大な効果をもたらすEDM。もはやこのムーブメントは誰にも止めることのできないくらいに大きなものになりました。日本でも、今後さらに加速していくこと間違いありません!

text by EDM MAXX編集部(TS & NS)