デビュー曲”Drinkee”でいきなりグラミー賞候補に上ったり、iPhoneのCMに立て続けに2曲も起用されるなど、絶好調のソフィー・タッカー。

デビューアルバム『Treehouse』を引っさげて、ショウケースのため来日した2人に対面インタビュー。

アルバムの話はもちろん、共演者ナーヴォやアリサ・ウエノについて、DJセットやイビサのことなど、たっぷり直撃!

——そもそもULTRAと契約することになった経緯から教えてもらえますか?

タッカー「最初の頃はインディ・アーティストとして曲を発表していたんだ。でも”Drinkee”がアップルのCM(Apple Watchオンライン限定CM)に起用されてから、色んなレコード会社からコンタクトを受けたんだけど、その中のひとつがULTRAだったんだ」



——ULTRAといえばDJ/プロデューサーのレーベルという印象があるけれど。

タッカー「確かにそうなんだけど、違ったタイプのアーティストも過去にはいたし、今後はそっち方面も強化していくそうだから、僕らにとっても相性バッチリという感じ。ジャンルでくくれないタイプのダンスミュージック……ULTRA側もそういう実験的なサウンドに興味を持ってくれたようなんだ」

ソフィー「それにULTRAの人たちとも気が合ったわ。作品に関しても一切口出ししないし、やりたいようにやらせてくれる」

タッカー「みんなが知ってる有名レーベルだからでっかいビルを構えた大企業って想像するかもしれないけれど、実際にはニューヨークのオフィスはこじんまりとしているし、チームでやってる感じなんだ。あ、でも僕らはアメリカでは今でもインディのままだけど、そのほかの全世界に関してULTRAに任せてるんだ」

Sofi Tukker

——以前に発表されたEP『Soft Animals』では動物がテーマだったけど、デビューアルバム『Treehouse』に関しては?

ソフィー「テーマに関しては『Soft Animals』の続編みたいな感じかな。動物みたいに自分らしく正直に生きるっていうのが大きなテーマ。良いとか悪い、他人からどう思われるとかじゃなくて、自然体でいましょってことなの。『Treehouse』っていうのは嫌なことを忘れさせてくれるマジカルな世界。生命力に溢れているの。このアルバムをすごく誇りに思ってるわ。激しかったり、おバカなところもあるし、詩的だったりもして、いろんな感情が詰まっている」

——”Tree House”(ツリーハウス=木の上に作られた小屋)は日本ではあまり馴染みがないのだけれど、子どもの頃に遊んだ経験があったり?

タッカー「うん、子どもの頃、遊んでたよ」

ソフィー「私も」

タッカー「僕の父は僕らが転落するんじゃないかって心配したから、地表から60センチくらいの高さしかなかったけれど(笑)」

ソフィー「私の方は板で囲んだだけの代物だったけど、すごく高いところに作られていた。父や兄弟と寝袋を持ち込んでよく泊まったわ。すごくいい思い出よ」

Sofi Tucker

——幼少時代のいい思い出がアルバムに込められてるってことですね。

タッカー「うん、その通り。子どもの頃に抱いてたフィーリングだよね。ツリーハウスっていう自分だけ空間があり、そこのルールを自分で決めたり、いろいろと相続力を膨らませていた。そういう子ども頃の感覚が、このアルバムを聴くとよみがえってくるんじゃないかな」

——ピーターパン的な?

ソフィー「そうそう、子どもの頃に持ってた遊び心ってすごく大切だと思うの。そういう感情を持ち続けることが私たちのゴールと言えるかも」

タッカー「子どもの頃って、いつも何か作ったり、想像したり、学んだりしてたよね。毎日がエキサイティングだった」

ソフィー「成長の連続」

タッカー「僕はこれ以上、もう身長が伸びちゃ困るけど(笑)」

ソフィー・タッカー_ライヴ写真?(Kayoko?Yamamoto)-1

——”Best Friend”にフィーチャーされてるゲストの選択は、どんなふうに?

タッカー「曲のテーマに合わせて、いろんな国の人たちをいっぱい入れたかったんだ。それは当初から考えていたことで、ナーヴォとは、以前から共通の友人を介した知り合いだった。ナーヴォの2人から『東京の同じ事務所に所属している子がいるけど、ソフィー・タッカーはポルトガル語でも歌ってるし、もし日本語も入れたかったら教えてよ』ってメッセージをもらって、それがアリサ(・ウエノ)のことだった。アリサに曲を送ったら気に入ってくれたんだ。その後、ニューヨークの僕らの親友、ザ・ノックスも加わった。すべてがメールやメッセージのやり取りで作られたんだ」

ソフィー「レコーディングでも全員が顔を合わせることはなかったわ。ミュージックビデオを収録するまでは」


——あのビデオはイビサ島で撮影されたんですよね。

ソフィー「すごく楽しかったわ。監督してくれたのは私たちの親友のマック・ブーシェ(Mac Boucher)よ。私たちの他のビデオもいろいろ手がけてくれている。シンガーのグライムスの兄弟で……彼女の兄か、弟か、どっちだったかしら(笑)」



——イビサでパフォーマンスしたことは?

タッカー「イビサでは”NERVO NATION”(ウシュアイアで開催のナーヴォ主宰フェス)に出演したよ」

ソフィー「その時はDJセットだったけど」

——DJセットだと、どう違っている?

タッカー「基本、僕がDJをやって、2人で歌ったり、ソフィーがもっと派手に動き回るかな」

ソフィー「私はいつも終わってから筋肉痛だらけ(笑)」

タッカー「通常のライブをした後のアフターパーティでDJセットをすることも、よくあるかな。どっちも好きだから甲乙つけがたいんだ」

——DJセットでは、どんなタイプの曲をプレイしている?

タッカー「僕たちの曲を混ぜ込みながら、他のアーティストの曲もいっぱい掛けるよ。ライブの時はセットリストがあって、それに沿ってやるけど、DJセットではオーディエンスの様子を観ながら選曲できるから、より自由があるよね。もっとハードに行きたかったら、僕らの曲にはないようなハードな曲も掛けれるし」



——先ごろ、クリーン・バンディットの”Solo”のリミックスを手掛けましたよね。

タッカー「これまで手掛けた中で一番ビッグなアーティストかな。すごく気に入ってる曲なんだ。『リミックスを頼みたいんだけど』って依頼をもらったんだけど、『特にこういうバージョンを作って』みたいな要望はなかったんだ。自分たちのDJセットに合わせたリミックスという感じかな。普段のソフィー・タッカーよりもクラブ寄りになったかな」



——タッカーはロックやパンクなどを経てハウスミュージックに行き着いたそうだけど、いつ頃のハウスってこと?

タッカー「僕がハマったハウスは90年代のやつ。でも僕はまだ幼すぎたから、その当時は知らなかったんだ。で、大学生だった頃に発見してハマっていった。だから、ハウスの人気自体はあまりなかった時期だよね(笑)」

——ハウスは再びリバイバルで脚光を浴びてるけれど、それとは関係ないと。つまりカルヴィン・ハリスが今やってるからとかじゃなくて。

タッカー「そうそう、僕の方は時代遅れ。ていうか、早かったんだけど(苦笑)」

——たとえばどういうアーティストが好きだった?

タッカー「90年代ハウスが大好きだったよ。2000年代に入ってからも僕のセットにはラ・ブーシュ(La Bouche)、ハダウェイ(Haddaway)などがいつも入ってた。もちろんカルヴィン・ハリスがデュア・リパとやった最新曲”One Kiss”も大好きだよ。ものすごくレトロだよね。90年代に作られたんじゃないかと思うほど」









——海外ライブでは、そういう曲のカバーもやっていましたよね。

タッカー「あ、セプテンバー(September)の”Cry For You”ね。誰もが知ってるけど”誰だっけ?”みたいな、そういう曲が大好きなんだ」



——ライブステージでは中央に置かれた”ブックツリー”(パッドを吊るした木のような楽器)を叩いてるけど、そのアイデアはどこから?

タッカー「ライブでは何かスペシャルなことをやりたくて、ああいう形になったんだ。機材の前に立ってツマミをいじってるだけだと、観ている人はおもしろくないかなって。それより2人で走り回ったり、叩いたりした方が、動きもあってフィジカルで楽しいと思ったんだ」

ソフィー「ビジュアル的にもステージ中央にあってクールでしょ」

ソフィー・タッカー_ライヴ写真?(Kayoko?Yamamoto)-2

——もし、ふんだんにお金を使っていいなら、どんなステージにしたい?

2人「でっかいジャングル!」

ソフィー「あちこちに木々があって…」

タッカー「ツルがいっぱい垂れてて…」

ソフィー「そのツルを登ったり…」

タッカー「ツタ渡りをしたり…」

——ターザンみたいに?

2人「そう、その通り!(と大声で)」

タッカー「オーディエンスの方にもターザンみたいに飛んでいったり」

ソフィー「観客席にも木々がいっぱい生えてて、ジャングルの中にいる感じで、みんなで音楽を楽しめたら最高ね!」

ソフィー・タッカー『ツリーハウス』国内盤ジャケット写真
Sofi Tukker
Treehouse
Sony Music / ULTRA
iTunes / Spotify / AWA
http://www.sonymusic.co.jp


Text by Hisashi Murakami